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3・6・2 レーダー用ブラウン管

 

レーダーの場合には電磁偏向のCRTが使用されることが多い。電磁偏向の場合は、CRTの管の外部に電磁コイル(偏向コイル)を巻き、それに適当な電流を流して、管の一部に磁界を作ってやると、マグネトロンのところで述べたフレミングの左手の法則によって電子ビームを曲げることができる。上下と左右への偏向には二組の偏向コイルが必要であるが、レーダーのPPI像を作るためには一組だけの偏向コイルを使って、そのコイルをレーダーの空中線の回転に同期して回転させ、コイルには、のこぎり波の電流を流すようにすれば、この一回の三角波電流によって、電子ビームは管面の中心から外周に向かって偏向し、同時にその偏向の向きは、コイルの回転とともに管面を一周するように変化して、所要のPPI像が作られる。

電子ビームが管面に当たっても、何も見えないので、そこには蛍光体が膜状に塗布してある。カラーTVでも分かるように、蛍光体はいろいろな色の発光ができるが、レーダーの場合は、空中線の1回転の間、その像が残っていなければいけないので、図3・16(c)に示すように、蛍光面と残光のある燐光面とが二重に塗布してあるP7と呼ばれる蛍光膜を使用するのが普通である。この場合蛍光面はZnS : Agが塗布されて青白い光を出し、燐光面は(Zn、Cd)S : Cuで黄緑色に光り、これが残光となる。普通は橙色のフィルタで、蛍光の方を除去して使っている。このほかに蛍光面にP1(Zn2SiO2 : Mn、黄緑色)、P2(ZnS : Ag : Cu、緑白色)等いろいろなものを使ったCRTが作られている。レーダーで一般にCRT面の全面に黄色のフィル夕を取り付ける場合が多いのは、青色の蛍光を見えなくして黄色の燐光、すなわち、残光だけが見えるようにするためである。

CRT面における輝点の明るさは、蛍光面に当たる電子流の単位面積当たりの電子の数が多く、かつ、その速度が遠いほど明るくなる。この電子流を制御するには、カソードと第1グリッドの相対的な電位差を変えることによってできる。すなわち、第1グリッドの電位をカソードに対して負にするほど電子流は減少して輝度は暗くなり、逆に電位差を小さくするほど電子流は多くなって明るくなる。

 

 

 

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