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5・1・3 増幅回路の例

図5・2 、図5・6 に示した回路は、低周波信号の増幅に実際に用いられるトランジスタ増幅回路である。以下に高周波信号の増幅と電力増幅に用いられる回路を示し、それぞれについて解説する。

(1) 高周波増幅回路

高周波増幅回路は本質的には低周波増幅回路と変わらない。しかし、低周波増幅のときは問題とならない導線と導線の間のわずかな容量(浮遊容量)や、トランジスタ内部の容量のリアクタンス分等によって、互いに干渉し、増幅作用が不安定になる。これを避けるために負荷としてLC共振回路を用いて、増幅する周波数範囲を限定したり、中和用のコンデサを用いて安定化を行う。

図5・13に高周波回路の一例として、受信機の中間周波2段増幅回を示す。IFTは中間周波トランスと呼ばれるもので、各増幅回路の結合とLCの共振回路をもった負荷として用いられ、その共振周波数を増幅しようとする周波数に合わせてある。

 

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図5・13 中間周波増幅回路

 

R1、R2、R3、とR4、R5、R6、はそれぞれTr1、Tr2のバイアス回路を構成する。C5、C7は図5・2、図5・6のCEに相当するもので、容量は低周波用のものに比べて小さくてよい。CN1、CN2は中和コンデンサで4・3・3の(4)で述べたhr(電圧帰還率)が、周波数の高くなるにしたがって大きくなり、増幅作用が不安定になることがあるので、これを打ち消すためのものである。これがなくても増幅作用が安定な場合は不要である。

(2) 電力増幅回路

これまで述べてきた増幅回路は小電力用のものであり、出力として増幅された電圧を得ればよいというものであった。しかし、例えばスピーカを鳴らして音を聞こうとする場合には、音のエネルギに相当するエネルギをスピーカに加えてやる必要があり、このためにはいままで述べてきた回路に比べて、大きな電力を出力として取り出せる増幅回路が必要である。

 

 

 

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