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このようにして、船舶用のレーダーは、船の周囲に何か電波を反射するものがあると、その存在が探知され、電波の往復の伝搬時間からその距離が、また、その方位を空中線の向きから知ることができる。レーダー(Radar)という言葉がRadio Detection and Ranging(電波による探知と距離測定)から作られたのはこのためである。船舶用のレーダーは、こうして自船の周囲にある物標を昼でも夜でも、また霧の中でも探知することができるので、見張りの補助手段として使用される一方で、相手の船までの距離と方位を時々刻々測定できるので、その相対的な動きの判断から、その船との衝突の危険をかなり前から知ることができる。さらに、陸地の著明な点からの距離と方位を測定することによって船の位置を知ることもできるので、航法用としても使用できるなど、多目的な使用法がある。

船舶用のレーダーをこのように普及させた原因の一つに、そのPPI表示がある。それは、このPPI表示であれば、CRT面はちょうど観測者が船の上空にいるヘリコプターから見ているのと同じように表示され、船の周囲の状況が一目で明らかになるからである。

このPPIはPlan Position Indicator(平面位置表示器)の略であるが、ブラウン管(CRT)上でのスポット(輝点)の動きを、パルスを送信すると同時にCRT面の中心から外周へ向かって放射状方向に等速で走らせ、さらに、その放射状の方向をレーダーの空中線の回転と同期して回転させる。また、そのスイープは反射波信号が受信されたときにのみ輝点が光るようにしてあって、空中線が一回転するのに3〜4秒は掛かるので、残光性のあるCRTを使うと、自船の周囲の状況が地図のように映像を表すことになる。この場合、船首方位をPPIの上にする相対方位表示(この表示では船が変針をすると周囲の物標はPPI上で回転する)とジャイロコンパスの情報を入れて、地図と同じように北を上方に置いた真方位表示(真方位表示又は安定化表示とも呼ばれ、船の針路を上方にした安定化表示もできる)とがある。真方位表示又は安定化表示の場合には、自船が変針してもPPI表示上にある船首方位を示す明るい線(船首輝線)が回転するだけで映像は安定している。さらに、真運動(トルーモーション)という表示も行うことができる。これは、ジャイロコンパスの情報のほかにログからの速度情報も入れて、それらによって、自船の位置をCRT上で自船の速度とその進行方向に相当する分だけ動かす操作をする。そうすると、CRT上の映像は静止している物標(例えば陸地)は止まったままで、自船を含めて動く映像はそれぞれの運動の方位と速度に従って動く表示方法が得られる。ただ、このトルーモーション表示では、何もしないでおくと、自船がCRTの映像面から外に出てしまうので、あまり自船の前方の視界が狭くならないうちに、リセットをして映像を移動し、元に戻す必要がある。このため自動リセット機能を持ったものが多い。

 

 

 

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