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●はじめに

航行中の船上で救命・救急として取り扱う傷病者は、多彩である。救急患者の初期対応は、まず衛生管理者による病状の把握からはじまる。そのため衛生管理者は、患者の症状を的確にとらえ観察し、バイタルサインを把握し可能な限り診断をつけつつ、現場で行える処置をしながら陸上の医師と交信しなければならない。

すべての患者が診断困難ではないし、むしろ大部分は衛生管理者によって診断可能な例と思われる。初期治療を早く行うためには、主な症状からどのような病気が考えられるかを、まず思い浮かべなくてはならない。そのための一助としてここに症例による診断のフローチャート式小冊子を送り出すこととした。

船上で救急患者が出た時、この冊子を参考にできるだけ早く情報をつかみ初期治療をし、どのような情報を陸上の医師に伝えるべきかを知るために利用していただければ幸いである。

 

●このフローチャートを利用するにあたって

ここにかかげたフローチャートは、船上で日常よくみられる症状ごとに疾患をあげたが、すべてを網羅することは避けた。

船上という特殊環境で働く人達の病気ということもあり、男性の20才代から60才代までを中心にした疾患にできるだけ絞った。また稀な疾患も削除し、救急処置を要す疾患を中心に慢性疾患は可能な限り最小限にとどめた。

船上での初期治療について、安静は当然のことなので削除し、また入院については特に緊急を要するものと、そうでない一般的入院とに分けた。

無線医療や洋上救急でみられる疾患も参考にし、治療についても船上で実施可能な簡単な初期治療中心にかかげてある。

 

2000年3月

社団法人 外航船員医療事業団

 

編集者:せんぽ東京高輪病院 海上医学研究室

医学博士 蜂矢敬彦

 

横浜船員保険病院

医学博士 庄田昌隆

 

海上産業医

医学博士 川島 寛

 

(注)掲載の一部資料は、(財)船員保険会発行の『無線医療助言通信ハンドブック』より転載しております。

 

 

 

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