出産の経緯は、タイ人女性が救急車で病院に運び込まれ、出産数日後「自分の手では育てられないのでよろしくお願いしたい」と手紙を置いていなくなった。出生証明書は病院の医師が出していた。その後今日に至るまで母親の所在は分からないまま。
預かってしばらくは子育てで精一杯。しかし落ち着いてくると、さて国籍の問題とかどうしたものだろうかと思うようになった。住民票がないと予防接種の連絡もこないし、3歳児健診の連絡もこない。無国籍だと教育の問題もどうなるのだろうと、心配が募り始めた。
平成7年4月、法務局の地元支部を訪ね、国籍問題について相談。タイ人女性から生まれたということはタイ国籍になるはず、とタイの法律書も見せられた。「タイの大使館に行って母親の身元調査がどうなっているかを確認すること」とアドバイスを受けた。それで、児童相談所から母親の身元調査がタイの大使館に出されていたのを知った。この頃は、国籍問題について児童相談所が動くのか里親の方で動くのかコンセンサスは取れていなかった。早く解決をみたいということもあって、私どもが動くことで児童相談所からの了承をもらった。