五、A子の里親養育記録
群馬県養育家庭(里親)横堀ホーム 横堀三千代
(1) 養育家庭の必要
梅雨のさなか激しい雨にうたれ、地面に落ちたねむの花。そのあまりの美しさに拾い上げた私は、ガラス皿に浮かべ食卓に飾った。いち早くそれを見つけた小学生の女の子が「あっ、きれーい」と叫ぶと、そこを通り過ぎたM子は口をつぐんで足早である。小学生の女の子の叫び声を聞きつけ、中学生の男の子が「なに!あっ、ほんとうにきれいだー」と共感して眺める。すると私の背中に抱きついて「つゆが光っているよ」と指でさして話し始める女の子。花ひとつ見ても感じ方や表現が異なり、成長の歴史が見えるような気がする。
皆が食卓についたとき、ある一人が「これ見た?きれいだろ」と言うと、「あたし一番先に見たんだよ」と不機嫌な顔をして言う子。一方、知的障害の中年女性は、「昨日だって、もっといっぱい落ちてたよ」と、普段の口の重さとはうって変わり、「今ごろ何を」とでも言いたいような顔つきで立っているのであった。