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白書によりますと合計特殊出生率が始めて2を割った昭和50年頃迄の我が国は、総人口も増加致しまして社会状況も経済の高度成長により雇用者化が進み、日本型雇用関係が普及し、或は郊外住宅地が建設され、核家族化、或は専業主婦化が進行した訳でございます。又、高等教育の普及によりまして社会が一定の方向に進んでいった。

この当時男はサラリーマン、女性は専業主婦が理想の家庭像でございまして、男は仕事、女性は家庭と、こういうような男女の固定的な役割分業がもっとも徹底された社会であったんではないかと、このように考えられている訳でございます。

しかしその後社会経済の変化によりまして、より豊かな生活や自らの生きがいを求めまして女性達は社会に進出致しまして、仕事と育児の両立をめざす事になる訳でございますが、夢であるはずの結婚生活は夫の協力も得られず、又、親兄弟の協力を得られず、地域の中の子育て支援機能もよく言われているように、非常に乏しくなっておりまして専業主婦にとりましても新興住宅の中で一人孤独に終日子育てに追われるなど決して優雅な結婚生活ではないと、そのような事が現実の姿になっていったとこのように言われている訳でございます。

そして女性にとっては自らのキャリアを重ね、仕事に生きがいを見い出す等によりかつてのように生活の為に結婚するというような事から解放されまして、付価価値のある結婚生活を送れるような相手を選ぶ事が可能になりまして、次第に晩婚化に繋がっていったんではないかとそのように考えられているところでございます。現在の女性にとりましては、いずれ結婚したいという願望がありながらも結婚につきまして積極的な希望を見い出せないまま独身生活を送っているのが現状であり、少子化対策と致しまして、結婚や子育てに夢を持てる社会の為の環境整備を強く訴えているところでございます。

政府と致しましても少子化対策につきましては平成6年の12月に厚生省、文部省、労働省、建設省の4大臣合意によりましてエンゼルプランを策定致しまして、厚生省におきましては保育対策の充実等につきまして緊急保育対策5ケ年計画というような形で保育等の施策を充実しているわけでございますが、いずれに致しましても少子化傾向が続いておりまして政府としても危機意識を非常に強くしているという状態にある訳でございます。

特に昨年6月に先程御紹介致しました平成10年の厚生白書が閣議に報告されまして、この閣議の席上非常に危機感を募らせました各閣僚から活発な発言がございまして、この事を受けまして昨年7月に当時橋本内閣総理大臣でございましたが、総理大臣の諮問機関と致しまして学識者等による少子化への対応を考える有識者会議、このような会議が設置をされた訳でございます。

この有識者会議は人と人との絆の大切さを再認識し、子供を生み育てる事に夢を持てる社会の実現について幅広い観点から検討することと致しまして、インターネット等の広報によりまして子育てを実践しておられる若い男女の方々を委員に任命するなどの工夫を凝らしまして実体験に根ざした討議が行なわれたところでございます。

昨年の12月に、雇用慣行の見直しなどの働き方に関する事項、或は家庭、地域の教育の在り方等に関する事項等100項目に亘りまして具体的な方策を内閣総理大臣に提言を致したわけでございます。この提言の特徴の一つと致しましては、総ての方策につきまして各省庁、或は地方公共団体、労使等実施の中心となるべく主体を明記した事が一つの特徴でございます。又、この提言が絵に書いた餅に終らないように、国が主体となるべき方策の推進の為に内閣に閣僚レベルの取り組み体制を設置することと、国民的な理解と広がりをもって環境整備を進める為、各界の代表からなる国民会議の設置が提言されたところでございます。

 

 

 

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