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航空写真・米軍撮影(昭和二十二年 1947)

家屋台帳・昭和20年以前建築の民家データベース

2]ミクロ的

足軽屋敷地区から敷地及び民家等に向けて視点を運び、いかにもその屋敷群を歩いているかのように、足軽屋敷の町なみを概観する。データベースとリンクさせることによって、町なみの塀や生垣の連続面、道幅、溝、民家一軒一軒そしてそのディテールに及ぶまで空間分析する。

彦根市 ディジタルマップ

「御城下惣絵図」(天保7年 1836)

航空写真(昭和57年 1982)

航空写真(昭和36年 1961)

航空写真・米軍撮影(昭和22年 1947)

彦根民家調査カルテデータベース

家屋台帳・昭和20年以前建築の民家データベース

「彦根藩侍屋敷之図」(文政12年1829)データベース

 

6-2 考察

「御城下惣絵図」という精度の比較的高い絵図を背景にして、彦根市ディジタルマップ、航空写真を貼り時系列で比較すると、区画から道幅はほとんど変化せず現在にいたると考えられる。また、ひとつひとつの屋敷地をみていくと、建物の変遷はわからないが、敷地の配置にそれほどの変化がなく当時の敷地配列を推測することができる。更に、間口のサイズを推測ができ、現状と比較資料の可能性を持つ。また、地図の縮尺を推測できる。このように画像としての情報のままに時系列で照合できる絵図の貼りこみは有効であると考える。

しかし、より有効かつ適当に利用するには課題は多い。文字情報及び絵をどのように変換させていくかということがあるが、それは要素ごとにデータベース化することが適当であろう。

また、「御城下惣絵図」は敷地領域表示であり、かつディジタルデータではない。彦根ディジタルマップは建物のディジタルデータである。今回ミクロ的にみた場合、現段階では「御城下惣絵図」はデータベースとリンクできない。宅地領域と建物の重なりからおおまかな分析しかできない。しかし、ラスターデータには重要な景観要素が含まれているので、それらをいかに抽出・認識するか。言い換えてみれば、いかにベクター化するか、そのより有効かつ省力的な方法を検討してく必要がある。それを克服してデータベースとリンクさせていくことで更なる分析を可能にする。例えば、今回できなかった「彦根藩侍屋敷之図」(文政十二年1829)データベースによって、足軽屋敷の居住者の名字の変遷の分析を可能にするのである。方法としては、ラスターデータをトレースし、また別の地図を作成するという意味のリマッピングをすることによってトポロジー作成する。そのより有効かつ省力的な手法を検討していきたい。

 

6-3 今後の課題

地域文化財という観点から景観復原を考える時、文献史料・絵図が重要な史料である。今後はその史料から、いかに景観要素の抽出をしていくか、が最重要課題であると考える。地域文化財の要素としては、寺社仏閣・樹木植生・河川・水路・溝等が考えられるが、それらは位置情報の確立が困難である。そして、その要素を史料から認識・抽出し当時と現状とを比較・検証するという、時間軸で地域文化財を分析するということが重要であろう。今後は、いわゆる時系列分析の手法を検討していきたい。

 

 

 

*景観…体研究において、景観とは、周辺空間とはっきり識別できるような一定の特徴を有する空間単元を形成しているものとして捉えている。

 

 

 

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