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表4 III期鎮静剤減量から死亡退院まで(19日間)

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この時期は、T氏の意志を確認し、再評価した時期である。

 

第3期:鎮静剤減量、再度の増量、そして死亡まで(表4)

鎮静剤を減量後、日中の覚醒している時間が増え、面会者と外出し一緒に食事を楽しむこともできた。しかし1週間後、苦痛が増強し「眠くなってもかまわない。どうにかしてほしい」と自ら訴え、症状に応じて鎮痛剤、鎮静剤を増量した。徐々に傾眠となったが、亡くなる3日前まで食事、トイレ歩行ができ、時々、家族と中庭で過ごすことができた。

この時期は、患者と医療者が共に考え、方針を決定した時期であると考える。

 

まとめ

鎮静剤を必要とする患者に対し、その意志を確認し、チームで検討しながら症状緩和の工夫をした事例について報告した。今後の課題として次の点を再確認した。

1. 入院時に患者の希望を可能な限り聞いておくことにより、その後の治療方針や、判断に困った際の助けになる。

2. 鎮静剤の使用による、いわゆるセデーションは症状緩和の大切な手段であるが、傾眠や思考力の低下を伴うことも多い。患者への説明をきめ細かく行うと同時に、終末期のQOLについて患者と共に考え、方針を決定していくことが重要である。

3. 経過の中で、いったん開始した薬剤が適切であるか、患者の意志に沿っているかを、繰り返しチームミーティングを持ち、評価することが大切である。

以上のように、患者への説明、意志の確認と尊重、そしてチームミーティングによる評価を繰り返すことにより治療方針を決定してゆくことで、最初にあげたホスピスの理念である「その人らしく時を過ごすこと」をはじめて達成できるのではないかと思われる。

 

第14回日本がん看護学会学術集会、大阪市、2000.2

 

 

 

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