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JICAの行う国際協力は、ODAの2国間贈与のうち、技術協力と無償資金協力の調査・実施促進業務で、「人づくり、国づくり、心のふれあい」がキャッチフレーズである。プロジェクト方式技術協力(PTTC)により、Technology Transferをする。

日本のODA予算は1兆円である。ほぼ同額を扱うアメリカの援助機関であるUSAIDにくらべ、日本のODA関係者はその4分の1しかおらず、少ない人数で多額の仕事を運営していることになる。フィリピン事務局との仕事は「調整」。専門家からの報告をもとに、現地保健省の目的とあっているかを検討し、予算を外務省に請求する。

フィリピン事務局の医療分野では1] 母子保健プロジェクト:中部ルソン2] AIDS:マニラ3] 結核:セブ4] マラリア:北ルソン・タラワン・ミンダナオ・パラワンなどでの協力のほか、これから始まるプロジェクトとしてフィリピン薬局方の制定があるという。

海外青年協力隊やNGOとの連携について、JICAはサポートで実施は保健省であるが、上からの意見だけではなく草の根の協力隊など、下からの情報交換も必要であることから、普及していく際は住民に密着したNGOの力を借りることもあるという。開発福祉支援という形で、資金面でNGOに協力することもある。また、日本のNGO、自治体、大学などと協力し、資金援助するContract out(国民参加型開発援助事業)も進められているというお話だった。

 

午後:UP(University of Philippines, Manila)とPhilippine General Hospital見学訪問

Family & Community medicineの教授とUPの学生らを交えて、まずUPの医学教育制度の説明を受けた。高校卒業生40名(男女比20:20)が1年生から入学し、2年間の教養課程を過ごす。この他3年次に120名の理学学士取得者が入学し、計160名となる。7年生でインターンになる前に、Clinical Clerkshipという制度があり、実際に患者さんを診察して病院実習をする。4年で医学学士、7年で医学修士を取得し卒業となる。上級生は医療の即戦力としてのレベルが求められているようだ。日本と比較して実践的な医学教育を受けているという印象を持った。

問題点として、多くの学生が地域医療に目をむけず、卒業後はアメリカなど欧米での仕事を望んでいることがあげられた。かつては80%、今も半数近くの学生が将来は海外で働くという。海外で先端の技術を身につけても、フィリピンでは機器が無くそれが使えないため、自分の技術と収入のため結局フィリピンには戻らないことになるのだという。その一方でフィリピンの地域社会に根差した医療をめざし、UPではCommunity oriented medical educationのプログラムも1981年から続いているという。

続いてPhilippine General Hospitalを見学した。ここでは窓口がCharityとPayに分けられ、収入の少ない患者さんは医療費が無料である。そのためか病院内は患者さんでごった返していた。病棟の中で手術が行われ、かなりの家族が看病しているようだった。結核の患者さんが一番多いが、糖尿病などの生活習慣病もあり、感染症から慢性疾患まで疾病の種類が多い。UPの卒業生は2年間無給で働かなくてはならず、大変そうであった。お金や薬が無いため、十分な治療を受けられない患者さんも多いようだったが、教材やClerkship制度などから医学教育に対する熱意が感じられた。

(文責:木村亜希、本庄太朗)

 

 

 

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