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中央アフリカ共和国協力計画

1999年度調査報告書

(寄生虫対策調査)

 

辻守康、下田健治、冨永建

 

【要旨】

 

昨年度以来の中央アフリカ共和国の政情不安がやや落ち着いているとの連絡を現地の日本大使館から戴いたので、本年度は例年通りに辻、下田、冨永の3名で平成11年7月の雨期に現地調査を行った。中央アフリカ共和国では政治情勢が如何に変わろうとも笹川記念保健協力財団による調査が期待されているとのことで、今回も空港には保健省の第一地方医務局長のヤシポ医師、バンギー中央病院のヤヤ医師、コバンゲ医師、バンギー大学医学部のカモウネ副学部長と日本大使館の実久派遣員が迎えに来ていた。最初の調査以来ずっと我々のカウンターパートであった元保健大臣のリンバッサ医師が逝去されていたことは非常に残念である。

今回は4年振りにケラ・セルジャン村の検診と治療を行うとともに昨年3月に採血して日本で検査を行った成績に基づくバンザ村での治療と健康手帳の追加交付、およびウワンゴ診療所の検診と治療を行った。

本年度の受診者はケラ・セルジャン村が237名、バンザ村が119名、ウワンゴ診療所が203名の計559名である。厚層塗抹法とMGL法による検便の結果、ケラ・セルジャン村では蠕虫卵の陽性率は39.9%で特に鉤虫卵陽性が38.3%と多く、住血吸虫卵陽性は16.4%であり、また原虫嚢子陽性は67.8%で、その中赤痢アメーバ陽性が16.9%、ランブル鞭毛虫陽性が7.7%であった。

バンザ村でも蠕虫卵の陽性率は37.1%で鉤虫卵陽性が35.1%と多く、住血吸虫卵陽性は1名の1.0%であり、また原虫嚢子陽性は64.9%で、その中赤痢アメーバ陽性が28.9%、ランブル鞭毛虫陽性が4.1%であって、住血吸虫はケラ・セルジャン村で高率で、赤痢アメーバはバンザ村で高率であった。ウワンゴ診療所では厚層塗抹法のみであるが、蠕虫卵の陽性率は9.9%で、鉤虫卵陽性が7.4%と多く、マンソン住血吸虫卵陽性は1.5%、また検尿の結果3.9%のビルハルツ住血吸虫陽性者が検出された。一方血液検査によるミクロフィラリア陽性率はケラ・セルジャン村では12.3%で、陽性者中ロア糸状虫陽性が82.7%と多く、逆にバンザ村では38.7%がミクロフィラリア陽性で、この陽性者中95.7%で常在糸状虫のミクロフィラリアが検出された。またマラリア原虫の陽性率はケラ・セルジャン村では60.0%、バンザ村では54.6%であり、大差は認められなかった。なおケラ・セルジャン村では熱帯熱マラリアが陽性者の82.3%と四日熱マラリアの53.2%よりやや高率であったが、バンザ村では熱帯熱マラリアが61.6%、四日熱マラリアが69.3%と大差は認められなかった。その他本年度にはバンザ村から1名の卵形マラリアが検出されているが、この1名は熱帯熱マラリアおよび四日熱マラリアも陽性であった。

 

 

 

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