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社会の安全

 

1 増加する刑法犯罪

日本の1998年の刑法犯の認知件数(発生件数)は269万件で、その内訳は、窃盗が66.5%、交通関係業務過失が24.4%とこの二つで大部分を占める。経年でみると、刑法犯の認知件数は、主として交通関係業務過失の増加によって、70年にピークに達した後減少したが、75年以降ほぼ一貫して増加、98年は戦後最高となった(窃盗179万件、交通関係業務過失66万件、殺人1,388件、強盗3,426件、傷害19,476件)。

発生率(人口10万人当たり認知件数)でみると、刑法犯の発生率は、77年に1,493のボトムから上昇傾向にあり、98年は2,127と50年ぶりに2,000をこえ戦後最高となった(交通関係業務過失を除く刑法犯の発生率は、98年1,698)。刑法犯の検挙率(検挙件数を認知件数で除した率)は、近年低下傾向にあり、98年は53.1%、罪名別では、殺人97.7%、強盗76.3%、窃盗33.4%、交通関係業務過失100%となっている。

 

国際的には発生率は低い

図1

国際的にみると、日本の「主要な犯罪」(交通関係業務過失を除く刑法犯)の発生率は97年1,506であり、正確な比較は困難であるが、主要5か国の中で最も低い。一方、検挙率は5か国の中でドイツに次いで高い。

しかし、主要な犯罪の発生率は、アメリカ(92年から)、イギリス(93年から)、フランス(95年から)では減少に転じているのに対し、日本は増加傾向にある。

一方、検挙率は低下傾向にある。主要な犯罪の罪名別のうち殺人についてみると、97年において、発生率は、アメリカ6.8、ドイツ4.0、フランス3.6、イギリス2.7に対し、日本は1.0で5か国の中で最も低い。一方、検挙率は、アメリカ66.1%、フランス81.9%、イギリス91.4%、ドイツ92.8%に対し、日本は95.3%と一番高い。

同様に窃盗についてみると、発生率は、イギリス6,026、ドイツ4,314、アメリカ4,312に対し、日本1,320と窃盗も5か国中最低である。一方、検挙率は、ドイツ31.5%、イギリス22.9%、アメリカ17.9%、フランス11.1%に対し、日本35.2%と一番高い。

国際的にみれば、日本は犯罪に関しては安心して暮らせる安全な国といえる。しかしながら日本の刑法犯発生率は戦後最高であり、犯罪防止への一層の取り組みが大きな課題である。

 

2 国境を超える犯罪活動

一方、ヒト、モノ、カネの国際化の進展に伴い、犯罪活動は容易に国境を超えるようになっている。銃器・薬物犯罪、密航、不法滞在、マネーロンダリング(資金洗浄:不法収益を隠したり合法的な活動による収入であるなどと偽装すること)、コンピュータ関連のハイテク犯罪等、生活を脅かす国境を超える犯罪に対し、厳重な対応を国際協調の下に強力に進めることが緊要である(なお、99年8月に「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」が、5月には「児童売春、児童ポルノに係わる行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が制定された)。

日本における外国人の交通関係業務過失を除く刑法犯の検挙人員は93年以降1万人から1万2千人で推移、98年は10,248人で日本全体の3.2%を占めている。このうち来日外国人(短期の滞在外国人)は、約半数の5,382人で(参考)、入国者数の減に応じて前年より微減したが、その罪名内訳をみると、重要犯罪・重要窃盗犯の検挙人員は対前年比10%余り増加している。

日本に在留する不法在留者(推計値)は、99年1月1日現在271,048人で、93年の298,646人(ピーク)より減少傾向にあるものの高水準である。

薬物は、ほとんど国際的な薬物犯罪組織の関与の下に海外から密輸入される。覚せい剤事犯の検挙人員は80年代後半の2万人から減少傾向にあった後、95年以降増加に転じたが、98年は減少して1万7,084人となっている。

 

 

 

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