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自治だより 平成11年7月号

(通巻NO.132)

 

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シャウプ勧告50周年に寄せて

林健久(地方財政審議会会長)

 

シャウプ勧告がだされたのは、1949(昭和24)年のことであった。ということは、現在の公務員のうち50才以下の人々はまだ生まれておらず、定年の60才の人たちにしても、せいぜい10才だったのだから、実感としてこの勧告を意識したということはまずなかったということになる。いまの現役の公務員全員が、ほとんど実感をもっていないのである。勧告も遠くなりにけり、で、歴史の靄のなかの曖昧な一齣となってしまっているのかもしれない。だが、『自治だより』の読者ともなれば、この勧告が、以下のような意味で現在もなお生きているのみならず、この勧告の提起した地方税なり地方自治なりの課題が、まだ十分には達成されていないことをこの機会に改めて想起し、前進への糧とすることが期待されても、あながち無理とはいえないであろう。

この勧告は、占領政策の一環として、中央・地方を通ずる日本の税制を根本から変革しようとしたものであって、国税についても大幅な改正が勧告されたが、とりわけ市町村に重点を置いて地方税を充実させ、それによって中央政府からの支配を弱め、地方の独立性・自律性の基盤を固めようとしたことが印象的であった。勧告はほぼそのまま1950(昭和25)年度の税制改正に盛り込まれた。その詳細についてここで述べる余裕はないし、他に多くの書物があるのでそれに譲りたい(注1)。

だがそのシャウプ税制は、占領終了とともに急速に修正されていった。その点は別の機会に詳しく述べた(注2)ので繰り返さないが、私の意見では、それは修正というより、崩壊・解体というベきものだった。

 

 

 

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