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IV バランスシートを活用した財務分析

 

以上の手法を用いてバランスシートを作成することにより、税金の投入等により整備された資産の構成や、将来返済しなければならない負債と返済を要しない正味資産との比率等のストックに関する情報の把握が可能になり、作成されたバランスシートを地方公共団体間又は時系列で比較する場合にも役立つものと期待される。

こうした分析も活用しながら、住民等に対して作成したバランスシートの広報・解説を行うことが重要と考えられる。

分析の手法としては、具体的には次に掲げるようなものが考えられよう。

なお、今後多くの作成事例を積み重ねることによって、ここに掲げた以外の分析手法も可能になるものと期待される。

 

(1) 社会資本形成の世代間負担比率

社会資本の整備の結果を示す有形固定資産のうち、正味資産による整備の割合を見ることによって、これまでの世代によって既に負担された分の割合を見ることができると考えられる。

また、負債に着目すれば、将来返済しなければならない分の割合を見ることができる。

 

(2) 予算額対資産比率

歳入総額に対する資産の比率を計算することにより、ストックである資産の形成に何年分の歳入が充当されたかを見ることができる。

 

(3) 有形固定資産の行政目的別割合

有形固定資産の行政目的別割合を見ることにより、行政分野ごとの資産形成の比重を把握することができる。

このデータを団体間で比較することにより、団体ごとの資産形成の特徴を理解することができる。

こうした分析により、今後の資産整備の方向性を検討するのに役立つものと考えられる。

 

(4) 有形固定資産の行政目的別経年比較

行政目的別の有形固定資産を経年比較することにより、行政分野ごとに社会資本がどのように形成されてきたかを理解することができる。

 

(5) 住民一人当たりバランスシート

通常のバランスシートでは、団体の人口規模等により単純な他団体比較が困難であるが、バランスシートの各項目の数字を住民一人当たりで算出することにより、単純な比較に役立つものと考えられる。

 

(6) 行政運営コストの算定

減価償却の考え方を発展させることにより、当該会計年度の現金の出納に止まらず、行政運営コストを説明する計算書が作成できるものと考えられる。

 

 

 

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