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27.3.2 当局は、進んで妥協的ポジションをとろうとすることもあるかもしれない。そうすることにより、下請業者に、下請契約に基づく係争と関連する事業権契約に基づく係争をめぐる事業者の訴訟の仲裁者に対して、その訴訟の一部として書面に陳述を行うことができる権利が与えられる。仲裁者は下請契約上の係争そのものには何の決定も下さない。そのため仲裁者の決定を事業者と下請事業者双方に対して強制力を持つものとするためには、別途両者の間でその旨の契約を交わしておく必要がある。

 

27.4 住宅供給助成金、1996年建設再生法

 

27.4.1 1998年5月に発効した、この法律は、建設に類する義務(メンテナンスを含む)契約に影響を与えている。この契約は、建設下請業者に対して、ある一定の権利、例えば完了した作業に応じて段階的に支払いを受領する権利を与え、迅速な紛争解決手続を定めている。

 

27.4.2 同法を外れて契約を締結することは不可能であり、それゆえその効力は、あるPFIプロジェクトにおける各契約との関連において検討されるべきである。しかしながら、PFI契約は、『建設契約(イングランドおよびウェールズ)除外命令(the Construction Contracts(England and Wales)Exclusion Order 1998)』第4章(および『1998年建設契約(スコットランド)除外命令』第4章)の効力により、同章において定められている諸条件を満たすことを条件に、特に同法の適用から除外されている。例えば、契約は、PFI(もしくは、これに類する原則を適用したプロジェクト)にもとづき締結されることを明確に述べなくはならない。また、契約は、契約が同法の適用から除外される資格を与えられるためには他にいかなる諸条件を満たすべきか、明らかにすることもまた有益である。

 

27.4.3 この除外は、PFIの下請契約にまで拡大されるとは考えられてない。この結果、事業者は(同法の適用がないため)当局に対抗する権利を付与されないが、下請業者は(同法にもとづき)事業者に対抗する権利を付与される。この状況を回避するために、事業者は、その契約に関わる取り決めが法的に十分であるよう確実を期さなくてはいけない(例えば、契約にもとづく権利および権限が、同法に違反せず、契約の機能について十分に条件が付けられている、など)。一つの方法は、契約にもとづく、ある基準が満たされた時にのみ、下請業者の、支払いを受領する権利が発生する(同じく事業者の、支払いを受領する権利もまた発生する)と定めることである。これは事業者が当局から支払いを受けた後でなければ、下請業者が支払いを受領しないことと同じではない(一般にそうみなされているが)。プロジェクト資料が同法に準拠するため、契約をこれに適合させる目的で修正することは無用であり、そのようにされるべきではない(但し、当事者の併合が合意された場合は、このかぎりではない)。契約において推奨される紛争解決手続は、同法において定められている手続に類似しており、それゆえ、当局に重大な損害を与えることなく、ある程度の適合が達成される。

 

 

 

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