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23.4 裏保証

 

23.4.1 当局は、何らかの状況においては直接的請求を提出する下請業者のそれぞれから、裏保証(すなわち、契約上の直接的保証)を得ようとするかもしれない。これは、リミテッドリコースというプロジェクトの性質を傷つけることはないが、求められている保証の内容が、プロジェクトの構造に対する包括的なアプローチにぴったり適合していること、すなわち以下の双方が条件である。

(a) このような保証が、補償責任の水準を増大させるため、もしくはそのままでは存在しない義務を課すために用いられるべきではないこと(【23.6 損害賠償額の請求】を参照のこと)

(b) このような保証が、優先債権者の権利を傷つけるために用いられるべきではないこと(【23.5 資金提供者の安全】を参照のこと)

(c) このような保証が、当局に中途解約以前には何の権利もあたえないこと(【20 中途解約】を参照のこと)

 

23.4.2 このような保証が求められる場合、当局は相手方の保証履行能力1を考慮するべきである。当該下請業者の親会社(もしくは、グループ内のかなりの資産を有する会社)によりの保証が必要になる場合もありうる。しかしながら、当局の立場を保護するために存在している権利(例えば遅延損害金)の事例をのぞき、当局の、裏保証にもとづき訴訟を提起する権利は、契約終了時に、優先債権者が対象の下請業者に対して有する直接的権利を行使した後にのみ、行使可能であるべきである。このような状況において優先債権者が行う回収は、当局により支払われるべき終了時の支払いから差し引くことができる可能性があるため、当局も異議を唱えるべき筋合いのものではない。

 

23.5 資金提供者の担保

 

23.5.1 当局は、優先債権者がたいていの場合、事業者およびそのコンソーシアムから、必要な負債金融を提供する代わりに、担保を得ようとするという事実から、若干の安心感を得ることができる。資金調達契約にもとづく事業者によるデフォルトがあった場合、優先債権者はその担保を行使し、優先債務の返済を目指す手続を開始することができる。このような担保の内容は、プロジェクト資料にもとづく事業者の権利の譲渡、裏保証、および建設段階担当の下請業者からの債務履行保証、事業者の株主および下請業者の株主からの保証である。したがって、事業者とその債権者会議は、その担保権が実行されることがないよう確実を期するため、みずからの、契約にもとづく義務を履行しようとするインセンティブを大いに与えられている。

 

23.6 損害賠償請求

 

23.6.1 当局及び事業者の、互いに対して、契約にもとづく義務の違反を理由に請求を起こす能力を制限することは、広く行われている。この能力を制限することの根本的理由は、契約の支払いメカニズムは履行のインセンティブが確実に存在するように構築されていること、および支払いメカニズムの結果として起こる減額が当局のこうむった損失を反映し、それゆえ、たいていのは当局の唯一無二の免責であることである。

 

 

 

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