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21.3.3 事業者は、契約が進行中の期間に、その債務を借り換えするか、もしくは返済予定を組み替えるかもしれない。その目的は、その資金調達費の低減、もしくはその収益の増大(【14.6 リファイナンス】を参照のこと)、あるいは建設の遅延、費用超過、もしくは一時的な劣悪な履行に起因して困難な状況になったプロジェクトを救おうとする試みであるかもしれない。後者の場合、優先債権者は、資金調達契約にもとづく権利において対策と採るか、その他の権利を行使することによって、プロジェクトの残余期間中に、未払い金を余分に回収できるかもしれないという期待において予定を組み替えるに過ぎない。当局が任意終了を選択するか、当局のデフォルトの結果として終了が発生する場合、優先債権者は、このような未払金が補償されることを確信していなければ、予定を組み替え、プロジェクトを救うことを避けたがる公算が大きい。

 

21.3.4 【14.6 リファイナンス】において述べられているとおり、リファイナンスは特定の場合を除き、制限されるべきではない。しかしながら、優先債務が増加して優先債権者が利益を得ることを当局が懸念する場合、終了時の補償の支払いにはその時点の優先債務を反映する金額が含まれるので、当局が当該終了に責任を負わない(すなわち、不可抗力を理由とする終了、もしくは賄賂及び詐欺による終了の際の補償の)場合は、このような支払いを対象に、当局の補償責任に起きるかもしれない増大に上限を設けるのは結構なことである。この、予想される筋書きは、事業者の財務実績を著しく悪化させるだろう。優先債権者が介入を通して債権を回収するので契約は継続し、優先債務は最初の予想を上回る増加を見る。不可抗力という出来事は、そういう時に必ず発生するものだ。

 

21.3.5 実際のところ、変更された融資を契約の範囲内に収めるには、少なくとも優先債権者からの依頼がなくては、この段階に到達することはまずありそうにない。当局が同意を拒否する状況を予想することは難しい。それにもかかわらず、こうした制限が依然として要求される場合、当局がその補償責任(このような金額は物価スライド制、(特に、利子率掛け繋ぎ契約の事例では)利子率の変動、および法律もしくはサービスの変更により増大する)は、その、契約の締結時に承認された優先債務に対する最初の補償責任の20%から30%以上増大すべきではないと定めることができる。当局は、(優先債権者が、問題が利用可能な制限の範囲内で解決されうること、および不可抗力もしくは当局のデフォルトが発生する公算が皆無であることを、確信を持って知りたいと望むため)優先債権者の、事業者から追加融資を請われた時の行動に影響を及ぼすかもしれない制限を課すことの必要性につき、慎重に検討すべきである。

 

21.4 終了時の相殺

 

21.4.1 当局は、事業者の未払いの負債を、事業者のデフォルト時に当局が支払う補償金と相殺する権利を、完全に付与されるべきであるが、【21.4.2】で詳述されている理由により、これが当該終了時の支払いに影響を与える見込みはまったくない。こうした状況にあっては、優先債務を他の債務から強制的に分離する必要性は皆無である。しかしながら、その他の状況では、相殺する権利の制限を導入することは受け入れられる。その他の状況下において相殺する権利を持っていないことにより起こる可能性のある影響を最小限にするために、当局は事業者に対して未収金をできるだけ発生させないようにするべきである。

 

 

 

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