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17.3 株主の懸念事項

 

17.3.1 事業者の株式所有者にとって、投資資金の移転が制限されることは好ましいことではない。これは、彼らが事業者への投資資金の移転を可能ならしめることにより、プロジェクトの資本金が集まりやすくなるとともに市場がより流動的になり、その結果バリューフォーマネーの向上に役立つためである。

 

17.3.2 殆どのリスクはサービス提供開始前の期間に集中しているため、事業者のリスクエクスポージャーは時と共に変化する。したがってこれを反映して最適な資金調達構成も変化するものと考えられる。株式移転制限は、資金調達構成の変更を阻害する。事業者は、資金調達構成の変更が可能であれば、例えば借り換えによってリファイナンス経費削減及び期待収益の達成が可能となり、結果として当局に対してより競争力のある価格を提示できるかもしれない。

 

17.4 原則に対する例外

 

17.4.1 例外的なケースにおいては、当局が事業者の所有権もしくは投資資金の移転にある程度広範な制限を課すことが妥当である場合もある(正確な制限規定はプロジェクトの資金調達構造によって異なる)。制限は包括的なものではなく、特定の問題点を対象とすべきである。また、一定の限界を設けるのが適正である。例えば、ある防衛関連プロジェクトの場合、当局は不適当な株主によって国家の安全が脅かされることを懸念するかもしれず、そのために制限が必要となる。刑務所プロジェクトにおいても、これに類する、公共の利益に関わる懸念が存在する。政治的な配慮が働く場合もある。例えば、当局はタバコ会社が学校事業の株式を保有することを望まないかもしれない。当局は、このような懸念及び制限についてできるだけ早期に、そしてどれほど遅くても交渉招聘状(Invitation to Negotiate)を発行する前に、入札者に周知徹底せしめる必要がある。

 

17.4.2 このような例外的なケースの場合、契約書には移転が認められない客観的な根拠と、もし実際上必要であれば株主として不適切な者のリストを規定するべきである。株式(または他の投資ツール)の移転の前に投資家に当局の同意を求めること規定することも考えられるが、関係者全員にとってより望ましくないオプションである。後者の方法が採られた場合、契約上このような同意が不合理に留保されない(又は遅延させられない)ことが明記されるべきである。同意を拒否する場合、当局は公序良俗に関わる理由によりそれが出来ない場合を除き、その理由を特定するべきである。

 

17.4.3 この問題が何らかの注意を要する性質を持つものである場合には、契約書以外の方法で(例えば、契約の一部とならない秘密文書において)規定することも可能である。注意を要する問題が契約に記載されるざるを得ない場合は、【25. 情報と守秘義務】で論じられている点が該当する。さらに、課される制限が契約の全期間を通して持続される必要はない。

 

 

 

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