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13. 法律の変更

 

13.1 はじめに

 

13.1.1 事業者は、契約にもとづき、準拠法を遵守する義務を負う。遵守を怠れば、事業者の不履行を理由とする契約終了が発生する可能性がある(【20.2. 事業者の不履行を理由とする終了】を参照のこと)。現行の立法を遵守する費用は、事業者が入札したサービスを提供する価格に組み込まれているべきである。しかしながら、事業者は、たとえば契約の締結前には予測できなかった法律の変更から発生する費用を価格に含めることはできない。問題は、こうした費用をいかにして支払うか、である。

 

13.1.2 法律の変更の取り扱い方は、物価スライド制や水準点の決定、市場テストといった問題、とくに営業費の増加というリスクと密接な関係がある(【14. 価格の変化】を参照のこと)。これらの規定は、当局によって移転される、法律の変更に関わるリスクの全体的なレベルを取り決める時に、規定間の相互関係の中で作成される。しかしながら、水準点の決定、市場テスト、および物価スライド制に関わる規定は、法律の変更に起因する資本費用の増大に関わるリスク移転の状況に重大な関係をもちそうにはない。

 

13.1.3 したがって、いくつかの契約においてはさかのぼって達成される法律の変更という局面は、それ自体が法律の変更というリスクの移転に関係する完全な概念を示しているわけではないかもしれないので、単独で考察されてはならない。たとえば、ある契約が(価格改訂による値上げを認める)水準点の決定と市場テストが行われることを規定すれば規定するほど、当局が法律規定の変更を達成する公算はより大きくなり、しかもよ当局の態度はより断固らるものになる可能性がある。

 

13.2 事業者の懸念と当局の懸念

 

13.2.1 事業者が懸念するのは、法律の変更は事業者の支配がおよばず、事業者の考えによれば当局もしくはより広義の行政府の支配の範囲内にあるものだとということである。事業者は、もっと平凡な商業契約であれば、たいてい法律の変更に伴う費用は価格の値上げを通して顧客に転嫁できる。PFI契約における価格は長期的な基盤に立って合意されるので、同様の弾力性をそなえているわけではない。しかしながら、実際のところ、当局(とくに地方自治体)の多くは立法に対して無視できる程度の影響力しか持っていないが、民間部門は伝統的に法律の変更の影響を処理して吸収し、その顧客に対して価格変更がもつ完全な影響を最小化するのに熟練していることを立証してきた。

 

13.2.2 当局は、事業者が法律の変更の遵守から結果的にもたらされる契約の費用をみずから支払うことに同意する場合でさえ、事業者をその費用の処理に向けて動機づけるインセンティブを減少させたがることはない。本章で詳述されているアプローチは、公共部門と民間部門の双方の能力に影響を及ぼそうとするものである。

 

 

 

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