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11. 支払いと相殺

 

11.1 はじめに

 

11.1.1 当局は、事業者が当局に対して負う確定後の金額を、当局が事業者に対して支払うべき金額から(サービス提供期間中であれ、終了時であれ)差し引く、明示的な権利が、かならず契約に掲載されるようにすべきである。これは、損害賠償金、および当局に対して返済の義務がある、その他の負債もしくは支払い責任(事業者が契約の終了にあたって負う、メンテナンス義務を遵守しかなったという不履行に関連して支払われるべき金額(【22. 終了時の調査】を参照のこと))にも適用される。終了時の相殺については、【21.4 終了時の清算】で、とくに取り上げられている。

 

11.1.2 本章で説明される相殺の権利は、サービスの利用不能もしくは基準以下の履行には適用されない(【10. 価格と支払いメカニズム】を参照のこと)。それらに関連した状況が発生した(すなわち、利用可能の基準もしくは履行の基準が満たされない)場合に自動的に適用される、契約上の減額があるからである。これらに関連する紛争は、【27. 紛争の解決】において取り扱われている。

 

11.2 当局の相殺する権利の範囲

 

11.2.1 これまで行政府による調達のあらゆる分野における標準的な業務は、当局に、事業者と英国政府との間に締結された契約にもとづき、事業者に対して支払われるべき金額を、事業者が当局に対して支払うべき金額と相殺する権利を与えてきた。実際、事業者と英国政府との間に締結された契約で、そうでないものはありそうにない。事業者はふつう、単一目的のための手段であり、事業者の事業だけが問題のプロジェクトだからである。

 

11.2.2 事業者が英国との間にそうでない契約を締結した場合、第三者である事業者の融資者が広範にわたる相殺条項に合意することを許可する見込みはほとんどありそうにない。一般に、融資者は、事業者が契約およびプロジェクト資料(合意された制限を条件とする)当局に対して支払うべき、確認された金額を、当局がかかる資料にもとづき事業者に対して支払うべき金額と相殺する権利を当局が有することを認めるに留まるだろう。通常であれば、当局はかかる権利を拡大しようとすべきではない。PFIプロジェクトのVFMによる利益の多くは、プロジェクトの権利と義務を、さらに普遍的な権利と義務から分離させることから発生するからである。

 

11.2.3 過払い、損害賠償金および補償契約にもとづき請求される金額は、確定金額の債務支払い請求にすぎず、これは相殺を発生させる見込みが高い。契約において定められたとおり該当する基準が満たされた場合(たとえば、サービス提供開始日が、事業者の不履行に起因して逸された場合、もしくは当局が補償の対象となる違反に起因して損失をこうむった場合)、適切な金額が当局によって計算され、次回の支払いから相殺されるべきである。かかる基準が満たされたか否か、もしくは相殺される補償額の水準に関する紛争の裁定によって、なにがしかの金額が払い戻されるか否かもまた決定される。これによって、事業者に払い戻されるべきだと裁定された金額に関わる利子もまた、支払われるべきである。

 

 

 

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