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8.2 修繕積立金

 

8.2.1 施設更新需要は何年かに一度しか発生しない一方で、サービス料金は通常、事業者の予算にしたがっておおよそ一定の金額が毎年支払われる(設備更新時にのみ特別の支払いを行って均等払いでなくすことも可能であるが)。したがって、サービス料の一部には、工場の補修や清掃、またはその他のより大規模な改修メンテナンスなど、事業者の予測するメンテナンスのための将来的支出のための金額が含まれている必要がある。

 

8.2.2 したがって、事業者はたいていの場合、将来相当額の資本支出があることを予期して数年間にわたって修繕積立金を積み立てる。こうした行動は、たいていの場合ファイナンス提供者によって義務づけられている。メンテナンスに関わるリスクを事業者自身が負い、下請業者に移譲しない場合はとくにそうである。その場合に求められる積立金の金額はかなりの多額となる可能性がある。

 

8.2.3 メンテナンスは必ず事業者のリスクとするべきであり、当局は修繕積立金の金額・所在および使用対象について指示を出すべきではない。また当局は、事業者によって積み立てられた修繕積立金についてはいかなる権利も要求するべきではない。むしろ、必要とされるメンテナンスがきちんと行なわれるように、サービス料の支払条件と契約終了時の引き渡し条件を適切に設定することに留意するべきである。

 

8.2.4 事業者のシニア・レンダーは、たいていの場合、事業者の不履行という事由においてみずからを守るために、償却積立金を要求するだろう。事業者はみずからの資金を調べて、まずシニア・レンダーに返済するので、契約の終了時に当局が事業者に支払うべき補償は、償却積立金の金額をはじめ、事業者によって保持されてきた金の総額の分だけ、減らされる(【21. 終了時の支払いの算定と支払い】を参照のこと)。当局は、それ以上、償却積立金に関わる権利を必要としない。

 

8.3 契約の満了

 

契約満了とともに資産が当局の所有に移転されることになっている(か、もしくはその可能性がある)場合、契約の満了が近づくにつれて、資産のメンテナンスに対する当局の関心はもっとも高まる。この問題については、【22. 満了時、および終了時の調査】で取り扱われている。

 

8.4 代替的利用法

 

8.4.1 メンテナンスがどのような方法で(それに、どの程度)、いつ行われるべきか、その詳細を決定するのは、メンテナンスに関連する諸問題を取り扱う一つの方法である(【8.1.4】を参照のこと)が、プロジェクトが代替的利用法を持たない資産に関わるものであるため、とくに残余価値に関わるリスクがいっさい事業者に移転されない場合(【19. サービス提供期間の満了時の終了】)は、これが重要となる。というのは、当該資産に代替的利用法があり、残余価値に関わるリスクを負うのが事業者である場合、資産のメンテナンスは、当然ながら事業者の関心事である。

 

 

 

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