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パネルディスカッション

 

コーディネーター

●藤岡幹恭 徳島文理大学短期大学部教授

パネラー

●立松和平 作家

●井元健二 カイフ交流推進会議座長

●河原キミヱ 徳島県生活学校連絡会顧問

●千賀裕太郎 東京農工大学教授

 

人間だけが、自然の中で浮かび上がっては、駄目…

 

藤岡−それでは始めさせていただきます。立松先生のお話、非常におもしろく、有意義に拝聴いたしました。ありがとうございました。私も学生に時々環境問題の話をするんですけども、その時に森から話を始めます。先ほど立松先生がおっしゃったと全く同じようなことを、わたしは立松先生ほど話が上手じゃございませんので、学生がどこまで理解してくれているかということは多少問題があるんですけども、立木が、森の循環ですね、森には無駄がないという話、しかるに人間は、とこういう話をいたしました。

ちょっとパネラーみなさんのつなぎ役として、話をさせていただきますと、人間の力が非常に弱い時代は人間もいろんな生物の一員として、この地球上で何とか生きておったと、人間が生きていくことがあまり地球環境の破壊だとか、そういうところまで、いかずにすんでおったと、ヨーロッパの学者でこういう計算をした人がおります。イエス キリストがお生まれになったとき、そのころの地球の人口は2億人だったと。人口論のマルサスという、イギリスの人口論学者がおるんですけども、マルサスが生きておった時には、地球上の人口は9億人だったと、ところが昨年、国連の統計によりますと地球の人口60億になりました。アフリカの内戦のさなかで産まれた赤ちゃんが、ちょうど60億人目の赤ちゃんだと国連が認定したと、まあ、こういう話がありますね。人間の数がべらぼうに多くなったと、と同時に科学技術というのがどれだけ有効なものか、よく分かりませんが、評価は別ですけれども、非常に人間が強大な力を持ったと、それである意味では人間が思いあがったと、そのために現在の自然環境破壊というのが生まれておる。そこでいろんな問題が発生しておるわけですね。

立松先生がご指摘になったような考え方で、戻るためにはどうしたらいいのかと、というようなことが今日の非常に大きなテーマになろうかと思うんですけれども、千賀先生、突然の指名で申し訳ございませんけれども、ひとつ、つなぎの話をお願いいたします。

 

千賀−そうですねえ、私ね、一通り、自然との共生を目指して、というんですけれども、さっき立松さんが、人間だけね、自然の中から浮き上がっても駄目だ。というようなことを言われてたんじゃないかと思うんですよね。今、一番、私心配なのは、人間そのものなんですよ。人間も野生動物だったわけでしょ。1万年ちょっと前くらいまではね。で、それが、これだけ文明を高度に発達させて、日本の今の状況を見てみても、人間の中の自然性のようなものが、非常に失われてですね、人間そのものが育たなくなってきてるという状況がおきてきてるんじゃないだろうか。これはまあ、教育学のね、議論ではなくて、我々が自分たちの子どもを育てたり、地域で子どもをみたり、あるいは学校で学級崩壊がおきているっていうふうなところを見てきてますとね、人間そのものが、自然を痛めつけたりした結果、人間にその結果が跳ね返ってきてるんじゃないか。非常に人間は偉い動物で力があってと思っていたけども、実は一番人間が弱かったのかもしれないという感じがしましたね。で、その自然っていうのは全く無駄がないって話を伺って人間自分に都合がいいように自然をねじ曲げて、逆に人間が今度はしっぺ返しを受けて、人間が人間として、育てられないという状況が今、生まれてるんじゃないか。特に子供を見てて、私はそういう感じが、非常に危機感を持ってるんですけどね。

 

 

 

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