日本財団 図書館


2 他地域の成功要因及び中球磨地域で取り組むことへの提案

ここでは、先に取り上げた各地域での取り組み事例をそれぞれ検証し、それぞれの取り組みに共通する成功要因を抽出してみた。抽出に際しては、事業などを進めてゆく上で基本的な3要素となる、「ヒト・モノ・情報」の視点から、それぞれ「人づくり、組織づくり(ヒト)」、「施設・特産物など(モノ)」、「情報、ネットワーク(情報)」の3つに分けて分類、整理し、どういった施策の理念やシステムなどが中球磨地域で将来像実現のための取り組みを行う上で参考となりうるか抽出、検討を行った。

 

(1) 人づくり、組織づくり

ア 地域づくりのシンクタンク

岩手県東和町のNPO的な組織である「空・山・川総合研究所」は、住民自身が地元のことを考えて行動する民間のシンクタンクを目指して活動している。平成2年に、ふるさと創生資金の有効利用を探る中、住民の発案により誕生。60人の研究員は全てボランティアであり、その活動内容はエコミュージアムの理念の普及を中心に多岐にわたる(図表4-2)。行政などに対し、点在する地域資源(サテライト)をネットワーク化し活用した町づくりの提言を行っており、また、町も、町の施設「総合情報センター」を活動拠点として提供したり、年間150万円の補助を行ったりして側面から積極的に支援する他、調査研究事業の委託など、対などなパートナーシップを築きあげている。さらに、民間組織であることの強みを活かして、やる気のある人を対象に機会や支援の提供を積極的に行っている。

一方、行政とJAで設立した宮城県丸森町の「農業創造センター」は、やはり地域資源を活かした地域独自の農業研究に基づく開発をとおし、農業の革新を展開することを目的としており、活用しうる地域資源や農業マーケティング、農村での楽しい暮らしの提案などに関する調査研究を行うシンクタンク的な組織である(図表4-3)。運営も町とJAの共同で行っており、経費及び研究員も両者が負担・派遣している(事務局6名、うち研究員4名。事務局は役場内に配置。)。

また、専門的な組織でなくても、地域づくり団体、住民によるワークショップなどで、地域の自然や特産物など地域資源を連携・活用した町づくりのプランを検討し、行政に積極的に提案するなど地域づくりのシンクタンクの萌芽とみることができる事例が見受けられた。

このように、地域資源を掘り起こしてネットワーク化し、それを活用した独自の地域づくりプランを提言できる、地域のシンクタンクとなるような組織によって、地域振興のための先進的な戦略を創出することが可能になると思われる。

中球磨地域においても、地域づくりに熱心に取り組んでいるいくつかの団体があり、また、合併により、行政や各団体においてスタッフが豊富になることから、多様な組織の形態によるシンクタンク的な機能を発揮する可能性は十分にあり、また、今後の地域づくりにおいて不可欠である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION