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ここで行政に目を転じてみると、今触れた価値やライフスタイルの多様化に伴って、住民が行政に求める役割(行政需要)は、増加の一途を辿っている。しかしながら、長引く景気の低迷の影響もあり、国も地方も、その財政は極めて厳しい状況にある。かくして、行政の役割の根本的な見直しが求められ、国においては、その役割の一部を、市場へ(規制緩和)、市民へ(NPOなど)、そして地方へと(地方分権)、移譲するようになってきているのである。

 

2 本調査研究の目的

前節で見たような地域社会を取り巻く環境変化の中で、各市町村は、地域の実態に即しつつ、分権時代にふさわしい行政運営の確立を図っていくことが求められている。

だが、特に過疎地域や中山間地域などにおける小規模町村は、人的・物的資源も限られており、介護保険など当面する行政課題への対応にも苦慮しているのが実情である。個々の町村で、喫緊の課題とされている分権時代にふさわしい経営力や企画力を備え、行政体制の整備を図っていくことは、非常に難しい課題となっている。

こうした中で、住民の日常生活圏の広がりに着目したまちづくりへの対応や市町村行政サービスの質の向上などを図るためには、市町村合併によって行財政基盤を強化し行政体制を整備することは、最も有力な選択肢の一つとなっている。

市町村合併に関しては、合併による規模の拡大効果の方で、行政との距離が遠くなる、周辺地域が衰退する、暖かみのある行政が展開されにくくなるのではないかと懸念する声もあり、合併の是非を検討する場合は、合併を通じて達成しようとする地域の将来像とその手段としての具体的な取り組みを明らかにし、関係町村の合意形成を図ることが重要である。

そこで、本調査研究では、法定協議会を設置し合併に向けての検討が進みつつある熊本県中球磨5か町村を対象として、この5か町村が合併をした場合、合併を契機として、新たにどのようなまちづくりをしていくことが可能になるのかという自治体振興策を検討し提示することで、関係町村の間での合併に係る協議に資することを目的としている。

 

3 本調査研究の位置づけ

市町村の合併の特例に関する法律第16条第4項では、「都道府県は、市町村に対し、自主的な市町村合併を推進するため、必要な助言、情報の提供その他の措置を講ずるもの」とされている。本調査研究も、中球磨5か町村に対して、その自主的合併の推進に「必要な助言、情報の提供その他の措置」を講じるために、熊本県が、(財)地方自治研究機構と共同で行ったものである。

したがって、今後、中球磨5か町村に県から提供される本調査研究の成果が、中球磨5か町村合併協議会による新町建設計画の策定において、一助となれば幸いである。

 

 

 

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