日本財団 図書館


大学からの特許は全特許公開件数(35万件)の0.04%という貧弱な状況にあるとともに、カリフォルニア大180件、MIT108件というアメリカの大学の年間特許取得件数に対し、わが国トップの東海大でも25件にすぎない(1995年度)。このことが物語っているように、知的所有権や産業への参画と言う面で、わが国の大学は厳しい状況にある。

つぎに、沖縄の現状をみると、企業・経済界の側からの学の側すなわち高等教育機関に対するニーズがある反面、高等教育機関の側が具体的に対応しきれていないのが実態であると言っても否めない。したがって、経営的に余裕のある大手企業では、外部に頼ることなく、独自の研修システムを構築しているところが少なくない。また、逆に、多くの小規模企業にとって、既存の大学などによる研究開発の内容は、自らの事業展開とはほど遠い存在のままにあるから、それへの期待も小さい。このような沖縄の実情は、自らの地域が求めている知識や技術、情報、経営ノウハウなどが何か、絶えず念頭におきつつ学校運営を進め、地域から遊離した古典的な象牙の塔に終始することを厳に避けるための努力を、地域が大学などの高等教育機関に求めていると言わざるをえない。そして、言うまでもないことだが、そうした要請は、産業経済分野のみでない。

 

(7) 亜熱帯気候のもとでの自然資源、自然環境・景観

各種の薬草や健康食品、さまざまな果実など、暖かい気候の恵みとも言える産物が、沖縄では、多数販売されている。また、近年は、海洋深層水の商品化への取組もなされており、トロピカルテクノセンターでは、モズク粉末の商品化の特許を取得している。しかしながら、こうした具体例はあるものの、豊かな自然の恵みを科学的に分析し、体系化し、商品化に至ると言ったシステムが未構築のままにある。漢方薬や海草療法など、今日の健康志向の高まりを考えると、さまざまな原材料が豊富な沖縄は、自然資源を活用した健康づくりの拠点となりうる可能性が高い。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION