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(2) 四街道市及び周辺地域における住機能需要の潮流

東京圏(1都3県)の住宅需要の動向をみると、1都3県とも平成10年の後半から回復基調にあるものの、まだ安定した状態にあるとはいえない。また、その回復のテンポには地域差があり、東京都では11年8月から需要がプラスに転じているが、神奈川県では10年12月、埼玉県では11年3月、千葉県では最も遅く11年4月から回復傾向に転じている。また、伸び率についても、東京・神奈川・埼玉は10%を超える伸びを示しているなかで、千葉県は10%に満たない伸びである。最近の宅地成約件数にも同様の傾向がみられ、一月平均の宅地成約件数は、東京都:10,000〜11,000件、神奈川県:9,000件、埼玉県:8,000件、千葉県:6,000件となっている。このように、千葉県は、首都圏他地域に比べ住宅需要の回復は遅く、成約率も低い。重厚長大、不況産業が多く集積しているという千葉県は、その産業構造のため、これまでも景気回復・土地の流動が遅いという傾向がみられたが、これに加えて都心の地価下落に伴う都心回帰の増加が、千葉県内の取引の回復鈍化に拍車をかけている。

県内でも、東京30〜50km圏付近の地価下落率が最も高い。現在、このなかに属する四街道市の土地の価格は、一坪あたり50万円以下での取引が相場となっている。バブルの崩壊により競売や安売りがみられたことや、取引実績があまりなかったことが原因だと考えられる。当面は東京に近いエリアで宅地取引が比較的活発な動きを見せるものの、その他は回復に時間がかかるだろう。

あるアンケートによれば、ほとんどの人が現状の住宅に不満をもっているという。条件・環境さえ整えば住み替えを望む潜在的な需要は少なくない。

 

(3) 四街道IC周辺地域における住機能の立地可能性

広域的にみれば、四街道市は、成田と東京を結ぶ交通幹線軸上にあり、東京及び千葉市への通勤のベッドタウンとしての位置づけがなされている。また、成田空港従業者の居住地としての位置づけも可能である。(なお、成田空港は23:00以降の離発着が認められていないため、24時間運行が可能な関西国際空港に一部機能を移転させ、それに伴い航空関係者が転勤したという情報もあり、住宅地の買い手となる成田空港関連の従業者が減少している可能性がある。)

四街道周辺の住宅地開発は、必ずしも良好な販売状況ではない面が見受けられ、少なくとも当面新たな住宅需要を導入するのは厳しい状況にある。

こうしたなか、住機能導入のためには、長期ビジョンを明確にし、開発エリアが一つのコンセプト持って、そのコンセプトが買い手にアピールできるようなものであることが必要である。そして、“安い価格での宅地提供”や“住みたくなるような個性的な住環境の魅力づくり”が重要なカギを握っている。魅力的な住環境形成は、住機能単独で整備しようとするのは難しく、例えば計画対象地200haを一つの“まち”として、生活の利便性が高いタウンを形成できれば、住機能整備の可能性も生まれてくるであろう。

先程も述べたとおり、四街道市の位置する東京30〜50km圏ではバブル崩壊による地価下落が顕著で、これを反映した低廉な価格で供給がなされる必要がある。そのため、例えば定期借地方式等による低廉な住宅供給手法の検討等とともに、官民一体となった宅地供給体制を考えることが必要である。

また、今後の高齢社会では、“高齢者が安心して暮らせるまち”も重要なテーマになってくるであろう。今のところ、高齢者をテーマにした住宅団地開発は、千葉県にはみられない。高齢者にターゲットを絞った戦略も十分に考えられる。

 

 

 

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