日本財団 図書館


住民は、首長と議員の選出によって自治体の意思決定に間接的に参加している。しかし、今日のように住民のニーズがさまざまに細分化され、しかも例えばサービスの充実を望む一方で負担を拒否するといったように、個人の間でさえもそれぞれのニーズが対立するという状況においては、この間接的な参加制度だけでは、その政治決定において民意を十分に反映できないことも事実である。まして、福祉の領域では切実な訴えをもった当事者の声を政策に反映することが何よりも重要なことといえるだろう。

 

(4) 権利擁護制度の充実

 

地方分権の潮流の中で、自治体の自治責任が増大するのと同時に、住民も自己責任が格段に増すこととなる。なかでも、健康福祉分野では、サービスを住民個人が選択して調達する仕組みとなるため、それに伴うトラブルが発生する可能性が高い。そのため、行政には利用者の権利擁護を目的に、セイフティ・ネットを張ることが求められる。まず、利用者がサービス事業者を選択できるように必要な情報を提供することが不可欠であり、このほか、サービスの利用の援助から始まり、相談・苦情処理、さらには、具体的な権利侵害に対する法的是正措置に至るまで、さまざまなレベルのものが含まれる。

現在、介護保険制度において予定されている権利擁護制度では、次のような役割分担となっている。すなわち、要介護認定、保険給付及び保険料等に係わる苦情ならびにサービス一般に関する相談・苦情については、市町村が対応し、要介護認定及び保険料に関する不服申し立てならびに事業者の指定基準違反に関する相談・苦情については県が対応する。さらに、国民健康保険団体連合会がサービスの質の向上に関する調査、指導・助言を行うなどの役割分担となっている。市町村の段階では、相談の窓口として問題整理の機能が重視されることとなろうが、市町村行政から独立したオンブズマン的な組織についても設置を準備している自治体があり、このような組織のあり方については、今後さらに検討していくことが必要である。

また、福祉サービスの利用制度化に対応して、利用者保護の観点から地域福祉権利擁護制度が平成11年度から事業化されている。この制度は、痴呆性高齢者などの自己決定能力の低下した者に対して福祉サービスの利用を支援するため、民法の成年後見制度を補完する仕組みであり、都道府県社会福祉協議会の事業として取り組まれている。このため、現在は、広域的な対応が行われているが、援助の内容が日常生活に密着しており、この制度が機能するためには市町村レベルでの事業展開を工夫する必要があると考えられる。

 

(5) 情報公開の推進

 

そして、以上の役割をより効果的に進める前提条件でもある情報の収集と公開である。「情報の公開なくして、参加なし」と言われるとおり、参加を前提とした健康福祉分野において、情報公開は住民ばかりか民間事業者にとっても重要なソフトインフラ(制度)の一つである。介護保険並びに社会福祉制度に関する情報はもとより、この制度に関連する事業者のサービス内容からボランティア活動に至るまで利用者に有用な情報を一元的に収集し、住民がアクセスしやすい方法で公開することが望まれる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION