小規模造船所での導入
以上の説明では、まだまだ表面的なので、さらに関連図書にて勉強し、規格の本質を理解してほしい。枝葉末節は誤解でも構わない。
そして、まずは、その要求事項と造船所の実態が、どれほどかけ離れているかを大筋で把握してみる。
次いで、品質システムの要求項目が、組織のどこの業務に当てはまるか確定する。
組織の括りは大きいほど、工程分割は少ないほど、品質システムは単純になる。小規模造船所の利点である。
ここで品質責任の見地から機能的に組織・職階区分が見直される。例えば、次長とか、代理とか、補佐のつく職分は、職務分担なのか、不在時の代行なのか…責任範囲が明確になってくる。当然に個人名での取決めはもっとも明快である。
要求項目に当てはまる業務がない場合は、その旨、品質マニュアルに明記すればよい。
ここまで考えを詰めるとISO-9000導入のイメージが見えてくるはずである。
問題は業務の外注である。
一般的な共通項目は、取引開始時に外注基本契約書に謳い、個別要求は発注書に明記し、注文内容に含むことにするとよい。設計であろうと資材であろうと、はたまた作業であろうと「品質」を外部調達するのである。
また設計の分割外注では総合調整が、生産の工程分割外注では連携調整が必要であり、その機能を元請けの造船所が持つか、進捗調整機能をも別件として下請けに出すか、実情に合わせて判断する。
発注単位は大括りの方が単純になる。
いわゆる「仕損じ」を計数でとらえる“赤伝”制度は、品質項目にも有効である。この際、購買・加工外注・構内下請の関連を包括して総合的に管理する調達システムを構築するとよい。
さきの要求項目の各項に付言したように、パソコン処理は小規模ゆえに必須ではなかろうか。
因みに、ISO-9000の普及に伴って適用に役立つパッケージ・ソフトは、かなりで揃ってきたので、小規模造船所の導入に適合するものがあるかどうか…関心のある造船所が出てくれば取り組んで調べてみたい。
同じような問題に「文書化」がある。
導入前に多量に準備することになるが、類似規模の造船所でなら殆どに共通性がある。
工業会で音頭をとり、有志や地域の複数の造船所で協働作成すればよい。
必要な文書を絞りこむのが要点である。重装備は形骸化の第一歩と心得たい。