経営者が船主の期待に応えるべく、その責務について公約し、従業員全体にキッチリ分担させ徹底させるのを、文書で表明しておくのである。
組織の要員も少なく仕事の兼務も多い小規模造船所ほど、目標や役割のブレークダウンを要せず、単純ダイレクトに伝わるので、内容は簡単になる。
この項目で、各個別造船所の特徴:経営者の姿勢がでる。
それを「そんなことは、家族みたいなもので気心は知れており、言わず語らずに融通無碍にやってきている。問題はないのだから、あらためて書き出すことではない」では通らない。
ありきたりの言葉でいい。ただし経営者自身の日頃の言葉で語ろう。
2. 品質システム
品質マニュアルの作成はシステム構築の必須事項。
それをもとに作業手順を文書化しなければISOは始まらない。だが、なんでも、かんでも…、ではない。あたりまえの、だれがやっても同じ手順となる自明な事項は、品質に関連しても省略してよい。
全体にいえることであるが、形式より実質である。ムダなことは理由が納得されれば要求されない。
この文書化が小規模造船所にとっては、一番の難物だろう。どだい内部の仕事絡みの文書など、皆無に等しい。以心伝心、経験の引き継ぎでやってきており、それで大過なかったからである。
文書化は、それなりに面倒だが、そう大袈裟に考えなくてよい。内容は、現状を判るように、箇条書きや図や表に表現すれば足りる。ビデオやデジカメの電子映像も引用するといい。
高齢化したベテランの残っている間に、聴き書しておきたい。マニュアル化は、いずれ若い年代から要望されてくる。
3. 契約内容の確認
品質要求事項の文書化はトラブルを防ぐために行い、契約内容は相互に確認する。
契約書を交わさない口頭での要求・承諾の場合でも、必ず記録して保管する。
日本の現状では、こと品質に限らず、契約問題は、まず船主関係から自衛上明確にしたいが、小規模造船所では立場上「水臭い話」と受け取られやすい。逆に購買や外注では、問題にならない限り「頬被り」していた方がまし…の慣行が生きている。
この不分明な上下関係を、どう克服してゆくか。
地域に根差す造船所では、お互いのためと腹を割って話し合う他ない。