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規制緩和の進む内航船に連動する小規模造船所の経営にとっても、そう迂遠な話ではないであろう。

これから説明するISO-9000は、「品質管理」に関連する一手法である。

 

ISO-9000とは

 

「品質保証の国際規格」シリーズのことで、造船でいえば、船舶の品質ではなく、造船所の品質システムについての標準。JISもZ9900として、同じ内容で取り入れている。複数の基準の集まりなので、シリーズを意味するSを末尾に伏して、ISO-9000Sと記されることが多い。

 

特徴を説明すれば:−

*ここでの品質システムとは、造船でいえば作業がマニュアル化されていて、だれがやっても、いつも船主の求める品質の船舶になるといった体系的な仕組みである。

*プロダクト(完成品)対象でなく、プロセス(工程)対象である。

*「個別そのつど検査」から「全体システムの監査」への移行である。

…と言えようか。

これは私自身の経験的理解である。こう規格に書いてあるわけではない。原文は英語、言葉からして実感的には分りにくい。受け取る人の条件や、適用の場面で、ニュアンスに差が生じる。

 

日本で発達したTQC(総合的品質管理)との違いは、例えば、造船所側の主観的発想「品質には自信あり」と、船主側の客観的発想「確認できる品質システムが必要」との差異ともいえ、かなりバタ臭い。それだけに違和感を持つ人も多い。

だが発想はともかく、国際標準だけに網羅的に規定され、かつリファイン改訂が引き続いていて、欠点が少なくなってゆくことに留意したい。現行は1994年版。

21世紀初頭の改訂“VISION 2000”に向けては、中小企業への対応なども検討され、実績からのフィードバックも盛り込まれて、編成もかなり抜本的となるが、本質や原則が変わるものではない。来年(2000)末には発効予定。

 

ISO-9000の認証取得

 

規格を読みこなして準備し、審査登録機関による審査に合格する。あと義務として伴う定期審査(この第三者審査と船主側の審査を「外部監査」という)で不合格になると取り消されるので、常に品質システムを維持しなければならない。

 

認証取得のメリットとしては、

・契約に有利、

・品質保証体制が確立かつ維持される、

・船主監督が簡略化できる、

・同業間の差別化になる、

…などが挙げられる。

 

 

 

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