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管理技術高度化講習会

1999.7.20 改1

ISO-9000Sによる品質管理の手法

高武淳夫

 

日本の造船所でのISO-9000の現状は、すでに大手では横並びに認証取得が終わり、中手の一部で導入が進んでいるが、小手では、まだ例を見ないようである。これは規模の異なる造船所間では倣えないことや、また造船では在来から検査承認機関があって、船主も直接に監督にかかわること、さらに小型船では輸出に絡まない内航が主であり、さしあたり費用や手間暇掛けての導入に必然性がないからであろう。

だがグローバル化の時代の動向からは、いずれISO-9000:品質管理の普遍化は避けて通れず、すぐその後にはISO-14000:環境管理が続いている。

そこで、小規模造船所(以下未取得の中小手を指す)の管理技術高度化の視点から、かつてのカメラ・レンズ工場での[初版1987年]導入を指揮した体験を思い返し、この国際規格そのものを造船対象に解説して、現状からの問題点を、先取りしてみよう。

 

なお、さらにISOでは15000:セキュリティ、16000:労働福祉…が検討のテーマとなっているようである。

 

品質管理の意義

 

はじめに当たって、分かりきった話であるが、品質管理の理念を確認しておきたい。

よく「品質」と言うと、高級とか、傷無し・完璧とか、贅沢とか…を思い浮かべる。世に言う「良かろう、高かろう」「悪かろう安かろう」の伝である。だが、それも考えてみると「良い/悪い」には判断の基準があってのことで、突き詰めると「品質管理」とは基準を明確にして「良かろう安かろう」を実現する営み…と理解されてくる。

客先要求に対して、不足品質も過剰品質も、いずれもあってはならない。当たり外れなく常に狙った1点:基準品質に結果すべきもの…なので、この「管理」の意味は「マネージメント」と捉えるより「コントロール」とされてきた。

つまり品質管理は、品質の向上そのものを目的にしたものではない。高い品質が目的なら、その目的品質を基準として、確実に遂行する手段なのである。

 

品質管理は制度と精度が問われる点において、他の管理にも共通する。

基準品質が不明確なとき、品質水準は最低品質の部分で測られるが、それ以上はすべて過剰なのである。品質管理が「ペイする」と言われるのは、無駄な過剰品質の削り落としが、コストダウンに繋ってくるからである。

最近では「良かろう安かろう」を選別する顧客の眼は、さらに厳しさを増し、サービス業でも「品質管理」が経営の盛衰を分けるものとして注目されるようになった。

 

 

 

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