日本財団 図書館


事故の苦情も企業名や商品型式、ブランド名は「プライバシーの保護」を理由に公表しない。また、苦情の解決内容も非公開だ。また、各自治体の消費生活センターが、業界のPLセンターに相談を回すケースも多い。「技術的に難しい問題だといって安易に回すと大きな問題を見落としかねない」(山田英郎・日本消費者協会専務理事)との批判もある。さらに、企業側が示談や和解の際に事故内容や和解金額について口外しないことを条件とする「秘密条項」も、事故を見えにくくしている要因だ。名古屋PL法研究会代表の杉浦英樹弁護士によれば「ほかに被害が出るおそれあっても、内密に部品交換すれば公にならなくて済みそうなケース」が目立ち、和解の二割程度で交わされるという。消費者側が企業に対抗する道具もできつつある。専門家の知恵を集められるインターネット、企業情報が取りやすくなる情報公開法などの新しい法制度がそれである。』このような日本の特徴に対して、「現状でも、欠陥隠しという行為の悪質性から、米国の懲罰的な損害賠償制度なみの高い慰謝料が得られる筈」との声や「裁判を起こし、消費者勝訴を積み重ねることが、低すぎる被害者の救済レベルを引き上げることに繋がる」といった声もある。いずれにしても、企業はそのうちに米国型になることを覚悟しなければならないだろう。

 

2. 船舶関係のPL法対象;

 

2.1. 船舶関係のPL法対象;

 

船舶関係でPL法の対象になる事故と部品交換で済む事故を図3に示した。

 

046-1.gif

図3. 船舶関係PL法対象事故3)

 

これは典型例であって、実際には「自動車運搬船で、車両係止用のデッキ上のリングに躓いて転んだとして訴えられた」といった些細なものもある。

 

2.2. 船舶関係PL訴訟判例;

 

米国に於ける判例、日本国内の処置例を2〜3示して置く。3) 4)

a.製品:ボート

原告 v 被告:Schmitz v. ボートメーカ

評決・和解:$550,000原告勝訴

事故の概要:湖で航行中の2隻のボートが衝突した際、右舷船縁のチークの階段がはずれ、そばにいた16才の少女の顔面を打撃し少女は右目を失明、顔面に神経症状を残すことになった。原告はボートメーカーに対し船縁のグラスファイバーの厚みが十分でない点が欠陥であると主張。陪審は欠陥を認め、賠償金55万ドルを評決。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION