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2. 経年変化による性能の劣化;

 

性能の代表として速力を例にとってみる。

新造船が就航してしばらくすると、船体やプロペラの表面が汚損(fouling)され、船体抵抗の増加、プロペラ効率の低下などによって船速が低下する。この汚損はドックに入渠して船底やプロペラ表面を清浄することによって回復するが、余程丁寧に清浄しなければ完全に回復しない。更に強度上修理を必要としない凹損などは放置されるから完全回復は望めず、この累積によって船速は年々低下する。この様子を図1に示した。

図1に破線で示した速力低下を経年変化(Agin Effect)ということもある。この低下は年間平均で約0.1Ktもあるといわれている。船齢10年で1.0Kt、20年で2.0Ktsの船速低下を見込まなければならないことになる。

上記は船体要因だけによるものであるが、機関の経年変化による出力の劣化(後述)も加算されなければならない。

 

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図1 汚損による速力の低下

 

3. 船体構造の信頼性と経年変化

 

3.1. 一般論

 

一般貨物船の船体損傷を各船級協会統計から求め、損傷形態別にみると、衰耗、変形、亀裂が全損傷の99%程度を占める。

衰耗分類に合まれる腐蝕は、時間に対して加速度的に進行する損傷と解釈され、疲労現象もまた時間に強い相関があるので、外力、就航条件の詳細は不明であっても、信頼度は時間に比例して低下し、損傷が発生すると解釈できる。

信頼度の表現としては、点検時の亀裂発見数であらわされることが多いので、ここでもこの表現をとってみる。亀裂は発見のたびに補修されるが、前回の点検で見落された亀裂が成長して次回の点検で発見されることもあり、また前回の補修箇所から再び亀裂が発見されることもあって、事象は複雑であるが、ここではモンテカルロ法シミュレーションによるBaysian解析を適用した1例で説明してみよう。

[解析例]

いま船艙内肋骨が200本あり、そのうち12本の肋骨が損傷を起こしても船体強度は安全であると仮定する。この信頼度のレベルを保つために、船齢に応じて点検期間をどのように設定しなければならないかを前記のシミュレーションで求めてみる。

その結果を図2(a)に示した。実線と・印の差が損傷のバラツキを示す。

本例の場合、平均的に12本の損傷肋骨を点検時に補修するレベルに保つためには、船齢が若い建造直後から12年位までは4年の点検期間でよいが、船齢が15年程度では2年に1度、船齢が20年を越すと毎年1回の点検補修が必要となる。

次に、信頼度を向上し、点検時に5本の損傷肋骨を補修するレベルに保つと仮定する。

この場合は、図2(b)に示すように、新造後10年位までは2年に1度、10〜15年の船齢では毎年1回、20年を越える船齢では年に4回点検補修しなければならない。

逆に点検時に20本の肋骨を補修するレベルまで落とすと、船齢15年までは4年毎、船齢20年以上では1.5年毎に1回の点検補修でよいことになる。[図2(c)参照]

 

 

 

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