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12. 摩擦撹拌接合

 

摩擦攪拌接合法 : Friction Stir Welding Process(以下FSWと称する)は、近年TWI(The Welding Institute)によって開発された新しい実用的固相接合法であり、画期的な接合技術として注目されている。最近アルミニウム合金製高速船の船体構造や高速車両・航空機・宇宙開発機器などへの応用が進められており、今後の接合技術の主要な地位を占めるものと考えられている。

FSWは加工物のアルミニウム合金よりも硬い非消耗性回転子(ドリル)による高速せん断接合法で、ドリル先端のスピゴットを溶接開先ギャップ間に差込み、高速回転させる。この際発生する摩擦熱により約400℃に達するとアルミニウム合金の内部組織は変形抵抗を失い、ドリルの回転方向に合わせて塑性流動が起こり、母材同士の組織が攪拌される。冷却後、組織は一体化し、母材同士が固相接合される。FSW接合には、ミグ溶接に使用するような、溶加材は不要である。

 

FSWを用いると、母材は溶融点以下の温度であるため、通常のミグ溶接などの溶融溶接と比べて、溶接熱影響部が小さく、したがって、アルミニウム合金熱処理材や加工硬化材の場合でも溶接継手強度の低下およびひずみの発生も小さい。また、溶接開先部の前処理が不要で、ブローホール、凝固割れ、融合不良などの溶接欠陥が発生する機会も格段に低下するのが特長である。

参考として、6N01-T5合金のFSWによる継手性能の例を示す48)。図3.86(a)はFSW継手の引張試験結果の一例で、ミグ溶接継手に比べ引張強さ・耐力・伸びともに高い値となった。これはFSW継手は熱影響部の軟化の範囲・程度が小さいことに起因している。図3.86(b)はFSW継手のVノッチシャルピー衝撃試験結果の一例で、FSW継手は、母材およびミグ溶接継手よりも衝撃特性に優れている。これはFSW継手の溶接部の組織が微細な再結晶組織となるためと考えられる。

なお、疲労試験の結果では、溶接のままのFSW継手はミグ継手の余盛削除の疲労強度とほぼ同等の値を示している。これはFSW継手の表面・裏面ともに平坦に近い形状であるため応力集中の度合いが小さいことに起因している。

 

 

 

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