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溶接継手における応力集中から進展する疲労き裂

 

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7.4.5 余盛の形状

 

(1) 突合せ溶接

 

余盛は、補強盛りと考えられることもあるが、それによって必ずしも強くなるとは限らない。余盛は、ビード表面の不整や多少の欠陥を補うもの、あるいは溶接表面を仕上げるときにはその仕上げ代に相当するもの、とみなすべきである。また、表面近くに発生しがちなブローホールを上部に逃がす等の意味で、多少積極的に余盛を付ける場合もある6)。しかし、過大な余盛は、

(1) 止端部に応力集中を起こし、疲労強度を低下させるので、き裂を発生しやすい。

(2) 入熱が大きくなるので、溶接ひずみ、収縮変形及び熱影響が増加する。

(3) 外観が悪く、重量が増加し、また、船底などでは摩擦抵抗を増す。

(4) 溶加材の所要量と工数が増え、不経済である。

(5) ビードの中央と止端では厚さの差が大きくなるから、放射線透過試験で一様なコントラストの写真を得難く、判定が困難となることがある。

などの観点から、望ましくない。

特に余盛を付けることを指示する場合は、溶接部の表面状況を表す補助記号(凸、前出のTable 7.8参照)で示すが、多くの場合はこれを省略し、一般の工作基準に従って施工する。例えば、Table 7.33は、JIS Z 3604における突合せ継手の余盛高さの許容限界であり、「特に仕上げをしないビード表面は、なるべく滑らかで、均一な形状であり、かつ、ビードの止端において母材とビード表面のなす角は、なるべく鈍角であることが望ましい」と規定されている。

船体のように繰返し応力を受け、疲労強度が問題となる場合は、余盛高さをTable 7.33の値より低く押さえ、止端における母材とビード表面のなす角(フランク角)を鈍角とするのは、当然のことである。

 

 

 

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