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3.1 「腐食性物質-金属腐食性試験方法の確立」調査研究報告

 

第1章 緒言

 

1.1 調査研究の概要

 

危険物の輸送に関する「国連・危険物輸送専門家委員会による危険物輸送に関する勧告(以下「国連勧告」という)」に記載されている金属腐食性試験について、その概要と調査研究にいたる過程を説明する。

国連勧告第8改訂版では、クラス8(腐食性物質)に関する特別規定において、「人の皮膚に完全な壊死を起こさないと判断された物質であっても、ある種の金属表面を腐食させる可能性を考慮する必要がある」という観点から、容器等級 ・比較的低い腐食危険性を有する物質 (Packing Group: Substances and preparations presenting minor danger) の試験方法として金属腐食性試験が規定されていた。

当該試験は、55℃試験液に鋼又はアルミニウム試験片を半没状態で浸漬し、その表面腐食度が1年につき6.25mm を超える物質を腐食性物質と規定し、試験用鋼として、P3(ISO 2604(?)1975)相当品、試験用アルミニウムとしては、7075-T6又はAZ5GU-T6 相当品が指定されていた。

しかし、国連勧告第9改訂版において ASTM Designation: G31-72(Reapproved-1990(STANDARD PRACTICE FOR LABORATORY IMMERSION CORROSION TESTING OF MEALS)が金属腐食性試験方法として引用され、これに伴って鋼試験片の材質も変更された。そして、現在の国連勧告第10改訂版においてもASMT試験法が継続して採用されている。

さらに、「危険物船舶運送及び貯蔵規則に基づく船舶による危険物の運送基準を定める告示」による危険性評価基準として、今回テーマのASTM法金属腐食性試験方法を含む国連勧告第10改訂版の内容を取り入れた海査第339号(平成10年7月付)が運輸省当局から通達された。

しかし、国内において新試験方法を実施している試験機関は少なく、試験方法自体も整合性を欠いているのが現状であり、国連勧告試験方法を検討し手順の指針を示すことが急務となった。

 

1.2 調査研究の目的

 

今年度の調査研究テーマ「腐食性物質−金属腐食性試験方法の確立」は現在の国連勧告に規定されている試験片材質を用い、試験方法として引用記載されているASTM金属腐食性試験方法を対象として実施するが、ASTM試験方法の記述内容は、定まった手順書的な記載内容ではなく、各種方法やいろいろなケースについての解説的色合いが濃く、試験室での金属腐食試験全般にわたる一般的解説書(guide)として記述されており、試験方法の詳細には言及していない。さらに、引用ASTMも多岐にわたっており、実務的手順書とは成り得ない。したがって、国連勧告に規定されている材質である容器用鋼及びアルミニウムに限定した範囲で試験方法の問題点を洗い出し、試験手順の詳細例を明示する事を課題の中心に据えて検討する。

さらに、ASTM法に不都合あれば日本から、より良い方法を国連に提案することも念頭においた検討も行う。

 

 

 

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