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第4章 危険物運送の国際規則

4.1 はじめに

船舶による危険物の運送には、当然のこととして国際間運送が含まれる。危険物のようにその取扱いの誤りが人、財貨に危害を及ぼすおそれのあるものは、国際間において統一された基準に基づいて運送することにより安全を確保する必要がある。仕出国と受入国の間において危険物の運送基準に差異がある場合は、危険物を円滑に運送することができないばかりでなく、運送途中の基準変更に伴う包装の開梱等むしろ危険性を助長することにもなりかねない。従って、危険物の国際間運送における安全確保並びに円滑な運送を計るためには、国際的に統一された運送基準の策定が要請される。

このような要請にこたえ、国際連合(以下「国連」) をはじめ各運送形態に係る国際機関(IMO、ICAO等)では、危険物の運送に関する国際統一基準を策定することとなり、それぞれの機関において基準作成のための審議が行われ、1957年には国連勧告が作成された。

危険物の国際運送は、陸、海、空のそれぞれの運送モードによるもの及びこれらの複数の運送形態にわたるもの等区々である。各運送形態における運送基準の若干の相違は、運送中の周辺条件の差異により予想される。しかし、危険物運送における基本要件、例えば、危険物の定義、容器の基準等は、運送形態にかかわらず統一した基準を策定することができる。

このような状況から国連では、危険物のすべての運送モード(陸・海・空)における運送の基本的要件である危険物の定義、容器の基本要件、危険物の試験方法及び判定基準等を策定している。一方、危険物のそれぞれの運送モードにおける基準については、その運送モードに係る国際機関が対応する運送基準を策定している。

ここでは、先ず国連における危険物運送の基本要件を、次に、海上運送される危険物の運送要件を定めている IMOのIMDGコード及び関連コードを、さらに、航空及び陸上運送の国際規則の概要をそれぞれ説明することとする。

4.2 国連勧告

4.2.1 沿革

国連経済社会理事会は、国際間の危険物の安全運送確保のために1953年にその下部組織として危険物輸送専門家委員会(以下単に「委員会」)を設置し、危険物の国際間運送基準の策定を行わしめることを決議した。この決議の趣旨は、危険物運送の基本的要件を国際的に統一することにより、各国及び各運送モードの区々な運送基準による運送阻害を排除し、危険物運送の安全確保及び効率化を図ろうとするものである。

 

 

 

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