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付録3 水分値の換算方法

 

A.3.1 水分値換算に関する研究の概要

本研究では、水分値をパラメータとして剪断強度及び荷崩れ危険性と代表円錐貫入力を関係付けているのに対して、剪断強度計測(一面剪断試験)と代表円錐貫入力計測(円錐貫入試験)の際の試料の最大粒径は異なっているため、水分値を適切に換算する必要がある(本文4.4節参照)。

これまでの研究では、篩い分けした試料の水分値の一次クライテリアを、最大粒径の異なる試料の水分値の上限に換算する際に、一定以上の大きさの粒子は水分を含まないとの仮定を設けていた。この水分値換算方法では大きな粒子を含む試料の水分値の上限は低くなり、安全側ではあるが、換算した水分値の上限に基づいて代表円錐貫入力のクライテリアを設定するには適当ではない。そのため、水分値の換算方法について研究した。

まず、最大粒径が既知の湿った試料中の粒子をよりメッシュの細かな篩を押し通すことにより篩分けし、元の試料及び篩下試料の水分値を計測することにより(以下、この試験を裏漉し水分値試験と呼ぶ。)、通過重量百分率に基づき、理想的に篩い分けが行われた場合の篩上試料(以下、仮想篩上試料と呼ぶ。)の水分値の計算を試みた。その結果、この裏漉し水分値試験そのものは必要な精度を確保し難いため、水分値換算のための試験法として適切では無いことが分かったが、同時に、仮想篩上試料の水分値は元の試料の水分値によらないという傾向を見出し、検討の一助となった。その結果、本文4.4節に述べた水分値換算方法を採用した。

以下、本研究で用いた水分値換算方法について解析するとともに、その精度について論じる。

 

A.3.2 水分値換算方法の検討

ニッケル鉱に含まれる水は、粒子に含まれるものと、粒子の間隙に含まれるものがあると考えられる。粒子の間隙に含まれる水は、さらに吸着水と遊離水に分けて議論する場合もあるが、ここでは区別しない。石炭については、これらの水をそれぞれ固有水分及び付着水分と呼ぶ。粒子の間隙に含まれる水の量は、篩い分けにより粒径分布が変われば大きく変化すると考えられるが、試料の水分が一定の値を超えた場合、粒子の中に含まれる水の量は殆ど変化しないと考えられる。過去の研究(5)により、乾いた状態のニッケル鉱に水を加えていくと、水分値が一定以上になったところで急激に粘着力が大きくなることが示されている。こうした粘着力は、主として粒子間の水(特に吸着水)による吸引力によると考えられるため、こうした吸引力が作用する前の状態では、水分の多くは粒子に含まれていると考えることができる。即ち、ニッケル鉱の粘着力が急激に大きくなる水分値とは、水分が粒子の中だけには入りきれない程の水分値であるとも考えられる。

 

 

 

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