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荷崩れ限界水分値は、ニッケル鉱の種類により異なることが知られている。一方、荷崩れの直接の原因は剪断強度の低下であり、水分値の上昇は剪断強度低下の原因であると言える。そのため、評価指標として剪断強度の代表値を用いれば、ニッケル鉱の種類(産地等)によらない、当該評価指標に基づくクライテリアを設定できる可能性がある。剪断強度の代表値としては、複数回の円錐貫入試験の結果として得られる代表円錐貫入力が適当であり、以下、代表円錐貫入力に基づく荷崩れ危険性の評価基準を「代表円錐貫入力のクライテリア」と呼ぶ。

本研究の目的を別の言葉で表現すれば、「荷役現場で容易に実施できる剪断強度評価試験法」を開発するとともに、「荷崩れ危険性から見た代表円錐貫入力(剪断強度の代表値: 評価指標)のクライテリア(評価基準)」を設定することであると言える。ここで、荷崩れ危険性から見た代表円錐貫入力のクライテリアは、鉱石の産地等によらないものであることが求められる。

 

1.2 ニッケル鉱の運送・積荷役状況

ニッケル鉱は、フィリピン、インドネシア、ニューカレドニアから我が国に、毎年約400万トン輸入されている。主な積み出し港を表1.2.1に示す。主として用いられている船舶は、載貨重量二万トンから四万トン級のばら積み船である。そのため、年間百数十航海、ニッケル鉱を積載したばら積み船が我が国に入港している。

 

表1.2.1 ニッケル鉱の主要積み出し港

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ニッケル鉱の積み出しの多くは、沖荷役で行われる。即ち、多くの場合、岸壁で艀に貨物を積み、曳船で艀をばら積み船の近くに配置し、船のグラブで艀から船倉に貨物を入れる。そのため、船としては荷役用のグラブを有するものが一般に用いられ、船のグラブを用いて、荷繰りが行われる。

 

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図1.2.1 荷繰り方法

 

一般に、荷繰りには、図1.2.1の(A)に示すように貨物のパイルの傾斜を小さくする方法と、(B)に示すように貨物のパイルの規模を小さくする方法がある。(A)の方法は非粘着性物質の荷崩れ防止にも有効であるが、(B)の方法は、ニッケル鉱のような粘着物質の荷崩れ防止にのみ有効である。ニッケル鉱の荷繰りでは一般に(B)の方法が用いられる。しかし、荷繰りを行ったとしても、ハッチの直下を除く甲板下には貨物の斜面は残るため、貨物には一定程度の剪断強度が必要である。

 

 

 

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