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4-17.所持人、回収、関係書類の有無

 

Q4-17-4:電子式船荷証券における「受戻証券性」というのはあるのですか。

1.船荷証券の「受戻証券性」(これはもともと手形等で使用される言葉ですが)とは、証券上の義務者である運送人が、証券と引換である場合のみ(証券の受戻と同時であるときのみ)、債務を履行する義務がある(貨物引渡義務がある)という性質を意味します。換言すれば、運送人は、(裏書の連続した)船荷証券を呈示した者に対してのみ貨物引渡義務を負うということです。

電子式船荷証券が発行される実際的前提は、(Q4-10-1)で説明したように、電子式船荷証券の発行・流通・回収のシステムについて、船会社・荷主・金融機関等の参加者、そして電子式船荷証券のシステムの設営・運営者との間で、包括的な契約をあらかじめ取り交わすということ(その合意に則って電子式船荷証券が発行されるということ)です。

従って、本質問に対する正確な答は、電子式船荷証券だからといって一義的に決まるものではなく、むしろ逆に、電子式船荷証券のシステムが、上記のような性質を有するように設計・構成されているかによります。

2.実は、紙の船荷証券についても、この点を明確に規定した国際条約はなく、各国の国内法でおおむねその趣旨の規定が認められています。わが国では、国際海上物品運送法第10条及び商法第776条でそれぞれ準用される商法第584条で認められています。英国では、例えば1889年のStettin事件で既にその旨が確認されています。米国では、Federal Bill of Lading Act 1916(S. 8)(但し1994年以降はThe Law Revision Title 49 Act, 1993により改訂された49 United States Code 80110 (a))によって認められています。

但し、正確に言えば、これをどこまで貫徹して認めるか(特に、船荷証券ないし運送契約とは別に、運送貨物の所有権に基づき引渡を求める者が出てきた場合)は、国によって差異があり得ます。

わが国には、船荷証券が発行されているときには、運送品の所有者であっても証券と引換でなければ引渡を請求できないとした戦前の判決があるようです(今日どの程度妥当するかは問題ですが)が、米国のFederal Bill of Lading Act 1916(S. 10) (1994年以降はThe Law Revision Title 49 Act, 1993により改訂された49 United States Code 80111 (a)(2))によれば、運送人は、運送貨物に対する権利者から引渡中止の要求を受けた後は、たとえ船荷証券所持人に船荷証券と引換に引渡したとしても免責されず、むしろ権利者に損害賠償責任を負うとされており、そこでは権利者に引き渡すべし(その場合船荷証券と引換ということはもとより請求できないはずです)ということが前提となっています。

 

 

 

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