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4-17.所持人、回収、関係書類の有無

 

Q4-17-2:電子式船荷証券だと、現在の「所持人」が常に「発行者」である船会社に把握でき、紙の船荷証券よりも船会社にとって有利、荷主にとっては場合によっては都合が悪いということにはなりませんか。

1.紙の船荷証券の場合、裏書譲渡によってのみその権利の移転が行われ輾転流通していくので、最終的な権利行使(貨物引渡請求)が行われるまでの間は、ある時点での所持人が誰かということは、運送人にはわかりません。

2.これに対して、電子式船荷証券の場合、その権利移転の状況は、電子式船荷証券のシステムの中のどこかで常に記録される(現所持人=現権利者が誰であるかという情報が、権利移転の度に更新されていく)という形をとりますから、もし運送人がその記録にアクセスできるならば、正に質問のような事態が生じます。そのことの是非を一般的に判断するのは、なかなか難しい問題ですが、その場合、少なくとも、紙の船荷証券では起きないことが起き、紙の船荷証券を電子的に置き換えるという範囲から超えてしまうことは事実です。

3.かつて1990年に、万国海法会(CMI)が抽象的な電子式船荷証券の発行・流通・回収のメカニズム(換言すれば電子式船荷証券における関係者の権利義務関係の抽象的モデル)として制定したCMI Rules for Electronic Bills of Ladingの場合、既に(Q4-16-3)で説明したように、本Rulesの下での電子式船荷証券の所持人の権利の譲渡は、旧所持人から運送人経由、新所持人へのその旨の電子メッセージでの連絡、及び、これに併せての旧所持人の有する個人キーの破棄と新所持人へのその発給が運送人により行われる、という形態をとっていますから、その経緯は、運送人に完全にわかってしまいます。

これに対し、昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/LのRulebookでは、これも既に(Q4-16-3)で説明したように、電子式船荷証券の「所持人」は、他の者へ権利を譲渡する場合には、その点を運送人ではなくBolero B/Lのシステムの運営者つまりBolero International Ltd.の運営するCore Messaging Platform宛に電子メッセージで通知し、同Platformは、その通知に則って現在有効な電子式船荷証券の内容を記録しているTitle Registryの記録を変更したうえ、新「所持人」にさらに電子メッセージで通知するという形態を採用しています。

 

 

 

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