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3-1. 電子商取引と船荷証券に関する問題

 

Q3-1-3:「貨物引渡請求権」とは何ですか? 船荷証券は運送品の所有権を示す有価証券では無いのですか?

船荷証券は、しばしば、運送品の所有権(物権)を表象する有価証券であると誤解されていますが、船荷証券そのものは、運送人に対し、運送品の引渡しを要求する権利(債権)である「運送品の引渡請求権」を有価証券化した債権証券に過ぎず、運送品の所有権そのものとは、直接は関係有りません。

考えても見てください。例えば、CONSILIDATORが荷主から貨物を集め、自分が船荷証券上の荷送人となって、運送人から船荷証券を貰い、受荷主には仕向地における自分の代理店を指名することも多いでしょう。この様な場合、運送品の所有権が、本来の荷主から、CONSOLIDATOR等に移転している訳では有りません。

船荷証券は飽くまで、運送人に対する貨物引渡請求権という債権を有価証券化したものに過ぎないのです。

そもそも、所有権などの物権の変動は、多くの国で、“意思主義”の原則をとっており、我国でも、民法176条[物権変動における意思主義]物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによりて其の効力を生ず。」と有ります。従って、当事者が、例えば、売買契約の中で、所有移転の時期や条件を如何に約定しても自由であり、船荷証券の譲渡が有っても、必ずしも同時に所有権の移転は生じません。

我国の判例でも、「売買において、売主が買主にB/Lを引渡しても、特約又は慣習が無い限り、これによって売主から買主への売買の目的物の給付としての引渡しがあったことにはならない」という趣旨のものが有った様に記憶しています。

従って、通常の場合、運送人には、船荷証券所持人(貨物引渡請求権者)が誰かは分かっても、運送品の所有権が誰の手に有るのかは知るすべも有りません。

 

 

 

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