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TDPPは、1991年に「障害者の社会参加のための国家戦略5ヶ年計画」(the five-year National Strategy for the Integration of Persons with Disabilities)の発表によりその役割を終えた。新たな「障害者の社会参加のための国家戦略5ヶ年計画」は、雇用、住居、レクリエーション、コミュニケーション、および交通へのアクセスを向上させ、また、社会への啓蒙とコミュニティへの参加を支援するものである。

90年代後半には具体的に交通事業者と消費者団体との間で、交通のアクセシビリティ確保に関する任意規則「コード・オブ・プラクティス」を定めた。鉄道、都市間バス、航空、フェリーそれぞれの業界ごとに策定されたもので、アクセシビリティ基準を示している。任意規定であるため強制力はないが、運輸省関連のCTAという機関がコード・オブ・プラクティスへの対応に取り組むように査察制度等を設けて業界を指導している。

 

b. センシティビティ・プログラムの政策的位置付け

 

カナダではほとんどの公共交通事業者で、センシティビティ・トレーニング(センシティビティ・プログラムと同意)が行われている。公共交通の従事者および契約事業者(自治体等との契約により交通手段を提供している事業者)は、障害者への適切な対応を行うための訓練を受けなければならない。

訓練の実施に関する規定は、「カナダ交通法」(Canada Transportation Act)に位置づけられている。この中で、規則(regulation)として、「身体障害者の介助を目的とした交通事業者の従業員トレーニング」(Personnel Training for the Assistance of Persons with Disabilities Regulations)が定められている。1994年1月13日に告示された同規則は、「すべての交通事業者およびターミナル管理者およびその他交通に関連するサービスを提供している者は、利用者に対応するすべての従業員および契約事業者に、一定水準のトレーニングを実施しなければならない」としている。

従来のトレーニング・プログラムは、公共交通の従事者に対して、特殊な障害についてのみ情報を与えたり、障害の種類により、利用者から交通従事者へのコミュニケーションにどのような影響があるのかを教えるにとどまっていた。しかし、そうした教育だけでは、外見や行動から障害を判断してしまい、深刻な誤解や対応の不備を生じさせる結果になるということが明らかになってきた。こうした状況を受けて包括的なトレーニングの必要性が認識されるようになっている。

 

c. 「The Way to Go ; 交通サービスと障害者」の策定

 

カナダでは政府レベルで障害者への対応をまとめた交通事業者向けの教材を作成した実績がある。「障害者の社会的統合を目指す国家戦略プログラム」における運輸省助成により、民間の非営利団体が実際の作成を行った。『進むべき道-交通サービスと障害者-全ての交通モードの事業者(航空、鉄道、バス、タクシー、船舶)のための一般的なトレーニング・プログラム』(「The Way to Go : Transportation Services and Persons with Disabilities-A generic training program for use by service providers in all modes of transportation : air、rail、bus、taxi & marine」)と題されたプログラムの主な内容は表3-1-1の通りである。全体では3時間のレクチャーとビデオ教材が用意され、基本的には体験を重視したシミュレーション型のワークショップとして構成されている。

 

 

 

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