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高齢化社会における交通の役割

株式会社メディス

代表取締役 木原圭介

 

交通の役割は不連続なものに連続性を持たせることである。高齢者や障害者に代表される移動制約者にとって交通の不連続状態が及ぼす社会生活の不自由さは、健常者には計り知れない絶望感を与えているだろう。バリヤフリーやユニバーサルデザインという考え方が一般化しつつあるが、はたして本質的な意味で理解されているのだろうか。観念的に頭脳で理解しても、それを具現化した形で表さなければ、本当に理解したことにならないのではないだろうか。

交通従事者の視点からこの事を考えたとき、航空機は空を、船は海を、列車やバスは線交通を、タクシーは面交通をそれぞれの役割分担として担ってきた。しかし、これらが連結するところに、実は移動制約者にとっての不連続性が発生しているのである。たとえば移動制約者が、自宅から空港までタクシーで行った場合、空港ビルの入り口から航空会社のカウンターまでが移動障害となっているのである。あらゆる交通手段がドアからドアまでのサービスであるためにおこる不連続状況を解決することが、交通の役割を本質的に果たせることになる。

物質主義が生み出した最大の欠点である。あらゆる不連続をモノでつなごうとする思考の結果、無限のバリヤーを取り除くためのコストは膨大に膨れ上がり、さらに、取り除いたはずのバリヤーが、新たなバリヤーを生み出すことにもなっている。

「介護タクシー」は、介護の精神や技術を身につけたケアドライバーが、あらゆる不連続にブリッジをかけ、移動制約者の目的を最後まで達成する介助を仕事とする新たな職業なのである。言うならば、どんな機械よりもすぐれたヒトが、不連続をつなぐことになって、バリヤフリーが実現できたのである。さらに、バリヤーを取り除くための対価を、利用者が直接払うことによって、利用者は気兼ねなく行動でき、人間としての誇りと自由を失うことなく生きていけるのである。

日本がこれから迎える高齢化社会において、交通の役割はいっそう重要になるであろう。なぜなら、行動半径の広がった現代人にとって、高齢化することでおこる移動制約が与えるストレスは、以前に比べて遥かに強いストレスとなることが予想される。社会との接点を持ち続けること、それも本人の自由な意志に基づいた形でなければ、人は生きている意味を失ってしまうであろう。寝たきりをつくらないということは、交通にかせられた重要な課題である。

 

連絡先

株式会社メディス

福岡県遠賀郡岡垣町海老津1233-4

TEL. 093-282-1239

FAX. 093-283-2828

※木原氏は民間介護タクシーの先進的な事例としてテレビ等で取り上げられています。

 

 

 

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