(7)主要品目別にみた広域的な物流実態
フェリー等の海上輸送の利用促進のためには、大都市圏→北部九州→南九州という物流構造の変革の可能性について検討する必要性が高いと考えられることから、関東・関西・北部九州に立地する主要な荷主企業やその物流子会社等(家電、食料品、日用品、アパレル、出版等11社)を対象としてヒアリング調査を実施した。
1]物流拠点の配置
・家電、食料品、日用品など各メーカーでは、物流拠点の集約化が進展しており、九州地区でも物流拠点を福岡市近郊の1ヶ所に集約し、九州全域を受け持つ場合が多い。
・一部のメーカーでは中国・四国向けは工場直送化を進めているが、九州については関西からでは翌日配送に対応できないため、今後も拠点が必要と考えている場合が多い。ただし、小規模なメーカーでは東西2拠点に絞る動きもある。
・九州に物流拠点を持たない医薬品の場合、主に関西から直送されるが、福岡市近郊に物流業者が一時保管・積換のための中継拠点を設置している。
・日用品メーカーは大手各社が福岡市近郊に共同物流センターを設置し、共同在庫・共同物流を実施している。
・卸店は在庫を持たなくなってきているが、メーカーの拠点においても、今後は在庫レス、キャッシュフロー経営が重視される中で、保管量は減少していくとみられている。
・大手スーパーや家電量販店の場合、自社で流通センターを設置して各店舗に配送するケースと、流通センターを持たずに各店舗に直接納入させる場合がある。
2]物流拠点への搬入
・福岡市周辺の物流拠点への搬入は、関東・関西方面から陸送される場合が多いが、関西からはフェリーも利用され、関東方面からは鉄道を活発に利用しているメーカーもある。海外からの輸入品については、北九州港、博多港が利用される場合が多い。
・一部の家電製品などでは、自動補充システムにより、物流拠点の在庫状況に基づいて、各工場で必要なだけ生産され、一定の日数後に補充される仕組みができている。
・メーカー側では、出荷実績をオンラインで入手し、出荷見込みを予測するシステムを量販店の間で導入するなど、情報システムを活用して製販のカベ(社内)と企業のカベ(自社と得意先)を打破する取り組みを進めている。
3]物流拠点からの配送
・九州域内各地への配送は、特に長距離輸送となる南九州向けにおいて、各県に1〜4カ所あるターミナルにおいて積み換え、そこから二次配送する場合が多い。家電製品の場合、宮崎県には、宮崎、都城、延岡の3カ所のターミナルがある。
・配送先は、家電製品の場合メーカーが直接小売店に配送する。ただし、自社流通センターを有する量販店は、自社配送網で各店舗に配送する。このため、量販店の物流拠点設置と自社配送の動きが加速すると、メーカーと量販店が配送網を二重に構築することとなり、効率が低下する可能性がある。