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3. 長崎港の将来像実現に向けた戦略

 

(1) 長崎港周辺で生産・消費されるコンテナ貨物の長崎港利用促進

長崎港の将来像実現に向けた国際航路網の維持・拡充のためには、まず航路の開設・維持に必要な貨物量を確保することが最重要課題となる。「全国輸出入コンテナ貨物流動調査」(1998年10月の1ヶ月調査)によれば、長崎県で生産・消費される輸出入コンテナ貨物量は年間約1.2万TEUと試算される。これは週あたり約240TEUに相当し、まずこれらのコンテナ貨物のうち、長崎港を利用していない貨物について、長崎港への利用転換を促進していくことが重要である。なお、利用促進の対象となる長崎港周辺地域の範囲としては、長崎県全域および佐賀県南西部が想定される。

定期航路の維持・拡充にはベースとなる輸出貨物が存在することが有利であるが、現在の長崎港の利用実績は輸入に偏重している。長崎県内で生産される輸出コンテナ貨物は、電気機器、一般機械が主要品目となっており、これらの貨物の長崎港利用を促進する必要性が特に高い。

 

(2) 長崎港周辺で生産・消費されるコンテナ貨物の創出

上に述べた週あたり約240TEUという貨物量は、すべての相手国を合計したものであり、釜山港でのトランシップサービスが可能な韓国航路においては、そのほとんどを潜在的な輸送対象とすることができる。

一方、中国航路については、これらの貨物のうち中国発着分のみが対象となる。長崎県で生産される中国向け輸出コンテナ貨物はほとんど実績がなく、輸入コンテナ貨物は年間約4,000TEU(週あたり約80TEU)と試算されるが、上海等の方面別にみればこれより少なくなる。

こうしたことから、特に中国航路の維持・拡充に向けては、現在長崎県内で生産・消費されるコンテナ貨物の長崎港利用を促進するだけでなく、長崎港周辺におけるコンテナ貨物の生産・消費量自体を増加させることが1つの方向として考えられる。

 

(3) 他港との差別化による背後圏の拡大

長崎港周辺で生産・消費される輸出入コンテナ貨物量の不足に対する対応としては、背後圏の拡大も考えられる。ただし、その場合には北九州港、博多港、神戸港などの背後圏と重複することになることから、長崎港独自の魅力付けを行い、差別化を図ることが必要となる。その方向としては、中長期的な輸送体系のあり方で述べたように、長崎港の地理的優位性を活かした関東・関西方面と中国・上海等とを結ぶ航空輸送と海上輸送の中間的な輸送サービスの提供が有望と考えられる。

 

(4) 周辺港湾との連携による貨物量の確保

貨物量を確保するための方向性として、周辺港湾との連携も考えられる。具体的には、複数の寄港地を組み合わせて航路自体の維持に必要な貨物量を確保することが考えられ、現在開設されている韓国航路の場合も、熊本港・八代港との連携により航路開設に成功している。こうした連携については、貨物量の確保だけでなく、ポートセールス活動なども含めた連携に拡大することが考えられる。

このような連携は航路自体の貨物量確保には有効であるが、寄港地が複数となるため、より大型の船舶を使用する航路においては、1港あたりの寄港費用に見合う貨物量が確保できない可能性がある。

 

 

 

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