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(2) 中国航路の拡充

一方、中国航路においては、韓国航路とは異なり、航路の相手先寄港地周辺との輸出入貨物のみが航路の利用対象となる。そこで、「全国輸出入コンテナ貨物流動調査」により、1998年10月に長崎県で消費された中国からの輸入コンテナ貨物量をみると、約6,066トン(約337TEU相当)にとどまっており、このうち長崎港からの航路が就航している上海・福州・廈門周辺の貨物はその一部である。また、輸出は輸入と比較してごく少量しかない。このため、現在、長崎航路を利用している「既存貨物」に、長崎港以外の貨物を利用している「転換貨物」を加えても、航路の増便に必要な貨物量には十分でないと考えられ、韓国航路で述べたような好循環を作り出すことがむずかしい。

こうしたことから、中国航路については、上海・福州・廈門周辺地域との経済関係を強化することにより、新たに長崎港周辺で生産・消費される輸出入コンテナ貨物(「創出貨物」)を増加させ、十分な貨物量を確保していくことが必要と考えられる。なお、航路の利用対象地域(背後圏)を長崎港周辺以外に利用を拡大していくことも考えられるが、これには他港にはないサービスの提供などにより長崎港の差別化を図ることが必要であり、中長期的な取り組みが必要と考えられることから2.で述べる。

 

2. 長崎港における中長期的な輸送体系のあり方

 

(1) 既存2航路以外のアジア域内航路

中長期的には、長崎港周辺で生産・消費される貨物を対象とした「方向性1」「方向性2」に関して、既存2航路以外のアジア域内航路の開設により、長崎港からダイレクト輸送を行える地域を拡大していくことが考えられる。特に高雄、香港等の拠点港との航路を開設すれば、既存の韓国航路とともにトランシップサービスの複数化によるサービスの多様化も可能となる。逆に言えば、長崎港において貨物量確保の点から、そのようなトランシップ貨物を取り込んでいくことも必要である。

今回実施したアンケート調査によると、長崎港において新たに開設が求められる航路の寄港地として、台湾が33.3%と最も多く、次いでASEAN5が23.5%となっている。

こうしたことから、中長期的な航路展開の方向性として、単独の相手地域のみを対象とした航路ではなく、

・トランシップサービスの提供可能な拠点港(高雄、香港等)との航路

・東南アジア方面の複数の地域・港湾を組み合わせた航路

等の可能性が相対的に高いと考えられる。

「全国輸出入コンテナ貨物流動調査」による1998年10月の実績では、長崎県で生産・消費される台湾・香港・ASEAN5向けのコンテナ貨物は、輸出約1,000トン(約55TEU)、輸入約2,300トン(約130TEU)であり、週1便の運航とすると、輸出入合計で50TEU弱の貨物量となる。こうしたことから、現在の貨物量をベースとした場合、台湾・香港・東南アジア方面の航路開設には、長崎県で生産・消費されるコンテナ貨物のほぼ全量で長崎港で取り扱うことが必要となると考えられるが、現実的には考えにくい。

 

 

 

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