日本財団 図書館


■事業の内容

我が国の経済構造が変化して行く中で、物流分野においても我が国として国際的に遜色のない物流サービスを早急に実現する必要があり、政府は、2001年を目途としたそのための施策を「総合的物流施策大綱」として閣議決定した。
 一方、2010年頃をピークに我が国人口が減少に転じて、就業人口が減少し、高齢化していくことが予想されている中で、我が国の物流事業者の現状は、国内物流輸送の90%を占めるトラック輸送に見られるように未だ労働集約的な面が多く、また、いわゆる3K職業の一つに数えられる厳しい労働環境下に置かれているため、トラック運転手の不足などの問題が生じている。
 このため、総合物流施策大綱に沿って、今後、物流関連社会資本が重点的に整備され、物流システムも高度化されていく流れの中で、それを支える物流労働者の供給の問題がネックになる可能性が懸念される。特に、物流システムの高度化・情報化、マルチモーダル輸送の進展等によって、質の高い労働力の確保が必要とされるが、今後の対応如何によっては、労働力コストの上昇が物流コストの低減の実現に当たって支障となる事態が予想される。
 本事業は、我が国の物流サービスを国際水準に引き上げるための物流システムの高度化に伴う労働供給の面から見た課題を明らかにし、今後必要となる労働力の確保と適正な配置について検討を行った。
(1) 実施方法
  委員会審議
 (財)運輸政策研究機構内に委員会を設置し、調査方法の決定、調査内容の検討を行い、現地調査実施し、作業の一部を専門機関に委託した。
(2) 調査項目
 [1] 物流事業者の労働力に関する実態把握
 [2] 物流事業を取り巻く労働環境の現状と今後の見通しの検討
 [3] 物流システムの高度化にあたって求められる労働力の検討
 [4] 労働力の確保とその適正な配置のための施策の検討
(3) 実態調査
 現地調査
  7月24日  物流事業者の労働力及び労働環境の実態把握
          調査地:八千代市 ダイエーロジスティックス   3人
  9月29日  物流部門における今後の労働力物流システムの高度化、及び物流施設における労働力の現状と今後の見通しについての実態把握
          調査地:札幌市 ニイイチ物流センター、大谷地流通センター 3人
 12月14日  国際航空貨物輸送の把握
          調査地:小松市 小松空港内北陸国際空港貨物ターミナル(株)
              日本通運金沢航空支店           2人
  1月25日  物流システムの高度化及び労働力の確保について現状把握
          調査地:仙台市 日本通運仙台航空支店仙台空港物流センター 2人
 2月1〜2日  物流政策の自由貿易地域について実態把握
          調査地:沖縄県 沖縄県商工労働部商業貿易課
              土木建築部那覇地区自由貿易管理事務所   2人
(4) 報告書作成
 [1] 部 数  250部
 [2] 配布先  関係官公庁、関係諸団体、大学、ヒアリング先、その他
■事業の成果

我が国の就業人口は、2010年頃をピークに減少に転じることが予想されており、労働力の不足が今後の大きな問題となる可能性がある。
 しかし、現在の物流業界の労働実態としては、国内輸送の90%を占めるトラック輸送に見られるように、未だ労働集約的な面があり、また、いわゆる3K職場のひとつに数えられる厳しい労働環境下に置かれている部門が多いことから、概して求職者に人気がなく、好況期にはトラック運転手の不足などの問題が顕在化する状況にある。さらに物流業界においては、今後、物流システムの高度化・情報化の進展等が予想されており、これらに対応できる質の高い労働力確保の必要性も考えられる。
 このような状況のもと、本調査は、今後の物流システムの高度化に伴って必要となる労働力の確保について検討することを目的として実施したものである。
 本調査では、今後の物流システム高度化の方向性について検討を進めた後、物流業界における労働需給予測を実施し、労働需給緩和策について言及した。
 労働需給予測に先だって実施したアンケート・ヒアリング調査では、事業者側の関心は3PLのような提案型物流や付帯サービスに向いていること、また今後の物流システムの高度化はEDI・ITSを軸に進みそうなことが判った。また法制度面から見ると、労働時間は今後も短縮傾向が続くこと、派遣労働者の増加が見込まれることなどがあり、さらに求職側からは、職業選択の基準として「仕事の内容」が最優先とされること、主婦労働力の活用には労働時間の制約が鍵となること等が判った。
 これらを踏まえて実施した労働需給予測では、絶対量としては輸配送部門で供給不足が著しくなること、また、質的観点を加味すると、営業部門での供給不足が予想されることが判った。
 またこの後、労働需給緩和策について触れ、物流業の魅力引き上げ、情報化の推進、物流業界の集約化、主婦や高齢者活用のための環境整備を4つの柱として推進すべきことを提言した。
 本調査結果は、今後の物流業界での労働力確保のあり方に止まらず、物流事業の将来の経営を考える上での資料としても、有効な活用が期待されるものである。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION