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■事業の内容

新規物質が多く出現し輸送量が増加傾向にある現在、運送時の危険性が比較的高い自己反応性物質、有機過酸化物、酸化性物質等に係るIMDGコードに示す試験基準のうち最も必要性の高い下記の項目について新規試験方法の詳細手順または代替試験方法に関する調査研究を行いこの成果を公表することにより海上貨物の安全輸送に資する事を目的に本事業を実施した。
・酸化性液体試験方法の検討(委託研究)
・デフラグレーション試験特性に関する研究(委託研究)
・固体酸化性物質の酸化性試験方法の確立(調査研究)
調査研究の詳細は、委員会として田村昌三東京大学大学院教授を部会長とした危険性評価部会を設置し検討、審議した。部会は4回開催され、その成果を報告書にまとめた。
(1) 委員会の開催
 [1] 危険性評価部会
   委員構成:学識経験者、国連危険物輸送専門家委員、業界関係者から委員12名運輸省からオブザーバー1名
(2) 調査研究
 [1] 酸化性液体試験方法の検討 (委託研究)
   国連勧告の新試験法に対応させるための液体用時間/圧力試験装置、システムの構築及び具体的試験要領の検討を行った。装置の材質はSUS316が試験に適合するか検討した。燃焼時間の長い試料の場合の圧力センサーの耐熱特性について調査した。また、試験で使用するセルロースの影響について検討した。点火システムの実施要領及び留意点を検討し、前記検討結果を踏まえ、各種物質のデータ集積を行い従来法との結果の比較検討を行った。
 [2] デフラグレーション試験特性に関する研究(委託研究)
   自己反応性物質及び有機過酸化物の試験方法において、少量の試料でかつ短時間に試験を終わらせると共に試験に伴う不意の爆発危険性を避けるために、スケールダウンした試料量及び装置によるスクリーニングテストを試行し、従来法による測定結果と比較検討を行った。また、固体やペースト状の試料について、結果に大きく影響すると思われる充填方法の検討を行った。
 [3] 固体酸化性物質の酸化性試験方法の確立(調査研究)
   国連勧告法による燃焼試験器の調査を行い、国連勧告法が要求する試験条件が設定可能とするため電源部の改良を行い、モデル試験器を試作した。可燃性物質であるセルロースの物理特性を調査し、水分含有量を変化させ、また、各種粒度の臭素酸カリウムを用い危険性判定基準である燃焼時間を測定し、各々の影響を調査し問題点を抽出すると共に、前記検討結果を踏まえた上で各種物質のデータ集積を行った。
(3) 報告書の作成
 [1] 部 数  50部
 [2] 規 格  A4版62頁
 [3] 配布先  関係官庁及び委員等
■事業の成果

本委員会の今年度の研究成果は「物質の危険性評価のための試験方法及び判定基準に関する調査研究」報告書に集約した。今年度の調査研究では3テーマとも十分な成果を得られたが十分でなく、追加検討の必要性も提案された。
(1) 固体酸化性物質−酸化性試験方法の確立
 国連勧告法による燃焼時の試験条件に合致するよう燃焼試験器電源部、着火線及び排気系統の改良調整を行い試験条件を整合させた。この条件下で各種セルロースや調湿したセルロース及び各種臭素酸カリウムや粒度を変えて測定しデータ収集を行った。燃焼時間はセルロースの種類及び臭素酸カリウムの粒度により大きく影響を受けることが明らかになった。水分の影響については更なるデータ蓄積が必要と判断された。また、国連勧告法に例示されている各種物質との燃焼時間の比較では、測定条件が明示されていないため単純な比較は不可能であった。測定時の含水量の影響等が今後の検討課題として追加調査することが提案された。
(2) 酸化性液体試験方法の検討
国連勧告法として採用された新試験法に従い試験を行い、測定システムの構築を行った。燃焼容器材質、点火具の構造及び圧力センサー近傍の温度の検討を行った。燃焼容器材質は耐食性のよいSUS316を試作し検討したところ、良好な容器材質と判断された。点火具の構造では、点火線固定方法を差込法からビス止め法に変更することで良好な結果が得られた。また、圧力センサーの使用温度範囲は−196〜200℃であり、試験時の温度上昇が懸念されたが、過塩素酸70%燃焼時が最高で115℃であり十分使用できることが確認された。セルロースの種類の違の検討では5試験品中3試験品の測定値が有意差なしと判定され、セルロース含水量の影響では水分5%で測定値のバラツキが大きくなることが明らかになった。国連勧告法に例示された物質の検討では、測定値の差が大きいことが分かり、今後の検討課題とした。
(3) デフラグレーション試験特性に関する研究
デフラグレーション (爆燃) 試験は、危険を伴う試験であるためより安全に試験するには、少ない試料量で行うことが好ましい。国連勧告法では試験容器として300〓のデュワー瓶を規定しているが、より小さい容器を試作し、国連勧告法でのデータを比較した。その結果、一部の小さい容器でも国連データと良い一致を示し、試験容器小型化への可能性を得ることができた。また、試験方法の検討では、目視と熱電対による測定について行った。液体試料は測定方法による差は認められなかった。固体(粉体)試料は固形不活性剤添加試料以外は差が無かった。低融点固体試料については固有の現象を示すため有効な測定値を得られなかった。検討課題として熱電対測定の測定タイミング、粉体試料の充填方法と燃焼速度の関係、低融点物質についての調査検討及び固体不活性物質含有物質についての不活性物質含有量と燃焼速度の関係について提案された。





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