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■事業の内容

船舶関係政府開発援助にある研修事業は、集団研修「船舶技術コース」、「船舶建造メンテナンスコース」、「船舶安全・海洋汚染防止コース」、「造船経営管理セミナー」及び個別研修として実施し、受入研修員は、44カ国505名に及んでいる。
 今後の研修事業を適切かつ円滑に実施するとともに、過去の研修実績を今後の船舶ODAに役立てるため、過去16年間実施した研修を総合的に調査・検討する必要がある。
 本事業は、帰国研修員の多い国を中心に計画的に実施することとし、運輸省の指導を仰ぎつつ現地調査により帰国研修員の実態及び活動状況を調査・検討するため、技術セミナーを開催し、最新の技術情報を広く提供し、帰国研修員の技術指導を実施した。また、研修員のネットワークを構築して、情報交換及び友好関係の継続的な維持を図ることを目的とした事業として実施した。
(国内作業)
(1) 調査要領の検討
  本事業調査要領の検討
(2) 講師打合会の開催
   第1回
   日 時  平成10年4月15日(水)13:00〜15:00
   場 所  (財)海外造船協力センター会議室
   議 題
    [1] 現地フォローアップ及び技術セミナーの日程について
    [2] 現地技術セミナーの内容及びテーマについて
    [3] その他
   第2回
   日 時  平成10年8月4日(火)13:00〜15:00
   場 所  (財)海外造船協力センター会議室
   議 題
    [1] 現地技術セミナーの評価について
    [2] 報告書検討について
    [3] その他
(3) 技術セミナー資料作成及び購入
   技術セミナー用作成資料
 [1] IMO report of the Maritime Safety Committee on its sixty-eighth session
 [2] IMO report of the status of Conventions and other multilateral instruments in respect of which the organization performs functions
 [3]  Energy Saving Ship & Damage
   技術セミナー用購入資料
 [1] MARPOL73/78 Consolidated Edition, 1991
 [2] SOLAS Consolidated Edition 1997
 [3] 1996 SOLAS Amendments
 [4] LSA Code
(海外作業)
(4) ネットワークの構築調査
帰国研修員及び関係者から日本における研修の評価・効果、研修員の定着状況、今後の研修のニーズ、不明帰国研修員に関する情報を聴取し、事前に取りまとめた情報とあわせて、帰国研修員の名簿を整理し、各地にそれぞれ同窓会を設立した。
 [1] バングラデシュ国
   平成10年5月 9日  ナラヤンガンジ造船所訪問
   平成10年5月10日  日本大使館及び国際協力事業団バングラデシュ事務所訪問
   平成10年5月12日  鉄鋼・技術公団本部及び海運局訪問
 [2] タイ国
   平成10年5月13日  日本大使館、国際協力事業団タイ事務所及び海事振興委員会事務局訪問
   平成10年5月15日  港湾局及び水産庁訪問
   平成10年5月16日  イタルタイ造船所訪問
   平成10年5月18日  ユニタイ造船所訪問
 [3] スリランカ国
   平成10年5月20日  日本大使館、国際協力事業団スリランカ事務所及び大蔵省訪問
   平成10年5月22日  港湾局及びコロンボ造船所訪問
(5) 技術セミナーの開催
 [1] バングラデシュ国ダッカ市
   日  時  平成10年5月10日 14:00〜18:00
   場  所  ホテル アボカシュ
   講演内容
   1.「1998年中に発効されるIMO条約改正の概要」
   2.「省エネ船の設計上の問題点及び船体構造に及ぼす海難とその対策」
   参 加 者  7名
 [2] タイ国バンコク市
   日  時  平成10年5月14日 14:00〜18:00
   場  所  アマリ ウォーターゲートホテル
   講演内容
   1.「1998年に発効されるIMO条約改正の概要」
   2.「省エネ船の設計上の問題点及び船体構造に及ぼす海難とその対策」
   参 加 者  20名
 [3] スリランカ国コロンボ市
   日  時  平成10年5月21日 13:30〜17:30
   場  所  スリランカ ファウンデーションインスティチュート
   講演内容
   1.「1998年中に発効されるIMO条約改正の概要」
   2.「省エネ船の設計上の問題点及び船体構造に及ぼす海難とその対策」
   参 加 者  18名
(国内作業)
(6) 調査資料とりまとめ
 現地調査で得た情報を取りまとめ、OSCC同窓会名簿を作成した。
(7) 報告書作成
「平成10年度船舶関係帰国研修員への技術支援及びネットワークの構築事業報告書」(A4サイズ38ページ)を10部作成した。
■事業の成果

(1) ネットワークの構築調査結果
帰国後の活動状況
 バングラデシュ国の帰国研修員の多くが高給を求めてシンガポール等の外国へ(うち1名は日本に在住)移住しており、外国への人材の流出は同国にとって頭の痛い問題となっている。同国に残っている者は少数であるが、鉄鋼・技術公団傘下の造船所や海運局他に属し中堅幹部として活躍している。
 タイ国の帰国研修員については、消息の確認出来た者はすべて同国に残っており、職場を変えた者も造船関連の仕事を続けている。
 帰国研修員の所属先は造船会社、港湾局、水産庁、海事振興委員会事務局及び大学等と多岐にわたっている。
 スリランカ国においてもバングラデシュ国と同様に多くの帰国研修員が外国に移住し、消息をつかめなかった者が多かった。同国に残っている帰国研修員のほとんどが研修時の在籍と代わらず港湾局及びコロンボ造船所等に所属している。
 いずれの国においても、母国に残っている帰国研修員は各国の造船業または造船行政を支える貴重な人材として活躍している。
参加した研修の評価・効果
 OSCCで実施した「船舶技術コース」、「船舶建造コース」、「船舶安全・海洋汚染防止コース」、「造船経営管理セミナー」及び「ポートステートコントロール検査官研修」のいずれも、帰国研修員の所属先及び帰国研修員自身から、大変有益であったと高く評価されている。
 研修項目では、造船所に勤務している帰国研修員には経営管理、品質管理、船舶設計、船殻工作、艤装工作が、また、行政に携わっている帰国研修員には船舶検査、国際条約の解釈等が、実際の仕事に応用できてよかったと評価されている。
 また、OSCCで学んだ知識・技術が今でもおおいに活用されている。
(2) 技術セミナーの評価
 今回、現地で開催した技術セミナーでは、「IMO関連条約の改正」及び「省エネ船の設計上の問題点及び船体構造に及ぼす海難とその対策」のテーマで、1998年中に発効される国際海事機関(IMO)関係条約の改正の内容と、省エネ船の設計及び海難事例について解説した。
 参加者はそれぞれに大変興味を示し、講師が現地へ来てくれたことにより最新の情報を得られてよかったと高く評価した。また、今回の配布テキスト、特にSOLAS及びMARPOLの最新版は、大変貴重なものであり、日常の仕事に利用できるのでありがたいとの意見が多かった。
 今回訪問した国々は海運、造船各分野共、発展途上にあり、特に省エネ船について深い関心があった。船型、船体構造、機関の種類等相互の関係が省エネ船に如何に影響するか理解したようであった。
 今後も度々このような技術セミナーを開催してほしいとの要望が強かった。
(3) OSCC同窓会の設立
 ダッカ、バンコク及びコロンボにおいて、技術セミナーのあと同窓会を設立することができ、各地の同窓会で幹事が選出され、各国のOSCC同窓会の規約が定められた。
 今回の訪問を機会に、長年音信不通であった研修員の消息もわかり、別添のOSCC同窓会名簿を整備することができ、今後の研修員との連絡、情報の伝達が容易になった。





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